日立vsアルストム「イタリア電車対決」の軍配 愛称「ロック」と「ポップ」並んで同時デビュー

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ポップの窓間の座席。外の景色が見えない座席はヨーロッパでは珍しくないが、台車や機器配置の都合で前の座席が一段高く、狭く圧迫感がある(筆者撮影)

ロックに比べると、ポップはもう少し空間に余裕がある。だが、ちょうど窓間の柱にあたる部分で窓がない座席が1カ所あった。こういった「窓なし座席」は欧州の車両では決して珍しくないが、ポップの場合はこの部分に台車や機器があり、さらにその先から床がカサ上げされているため、座ると周りがまったく見えず、非常に圧迫感のある座席となっている。

ここは無理に座席を設置せず、荷物置き場にするとか、せめて座席を反対方向へ向けることで、多少は圧迫感を避けられたのではないだろうか。設計者はわからないが、こういった部分については欧米は意外に無頓着だと感じる。

イタリアでの評価はどうなる?

列車の印象を決定するデザインについては、両車種とも特定の外部デザイナーを採用しておらず、いずれも社内でデザインされている。両メーカーともに、少なくとも前世代モデルまでは外部デザイナーを起用しており、たとえば旧アンサルドブレダ製のTSR型はピニンファリーナ、アルストム製コラディア・メリディアンの初代型である「ミヌエット」はジゥジアーロ、2代目の「ジャズ」はベルトーネ(内装のみ)と、イタリアのカーデザインで有名なデザイナーが手掛けている。

この点について日立の技術者に聞くと「これはフレッチャロッサ(イタリアの高速列車)じゃないだろう?」という返事だった。イタリアの車両というと、通勤で使う足代わりの電車であっても有名デザイナーの作品だというのがこだわりであったが、最近は高速列車など特別な車両でしか外部デザイナーは起用しないようだ。合理化ということなのだろうが、少々惜しい気もする。

いくつか難点も挙げたものの、両車種ともに次世代のイタリアの都市近郊輸送を担う期待のホープであり、デビュー後に現地でどのような評価を獲得するのか注目される。特に日立にとっては、イタリアの地元企業であったアンサルドブレダを買収後、一から設計した最初のイタリア向け車両であり、その評価は非常に気になるところだろう。会場には多くのイタリア人も訪れていたが、聞こえてくる声の多くはポジティブな印象を与えるものだった。運行開始後も、地元の人に好印象を持って迎えられることを願ってやまない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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