日立vsアルストム「イタリア電車対決」の軍配 愛称「ロック」と「ポップ」並んで同時デビュー
ポップで使用しているタイプのプラグドアは、閉じた際に表面が車体と同一になるのでデザイン面では優れているが、アームで外側へスライドする構造は見るからにきゃしゃであり、実際に故障して開かないドアを見掛けることが非常に多い。日立から何か助言があったかどうかまでは確認できなかったが、頻繁にドアを開閉する通勤・近郊型電車においては、デザインよりも信頼性の高さが求められることから、日本でも高い実績を誇るこの引き戸が採用されたと推定される。
ただ、戸袋を設けたためか窓の大きさと数が非常に限られており、車内へ光が入りにくいという印象を受けた。自転車や車いすの乗降ができる大きさのドアを収納するために戸袋も大きくせざるをえなかったのに加え、車体の構造上、2階建て車両は通常の箱型の車体と比較して強度の弱い部分が出るので、窓の数や大きさを増やせなかったことも関係しているだろう。
この戸袋付きの引き戸は、日立製作所が欧州市場へ参入してから現在へ至るまで、イギリスの高速列車「ジャベリン」や、都市間高速鉄道計画(IEP)の次世代特急列車なども含め多くの車両で採用されている。ただし日立には、同国内の鉄道ファンから「特急列車ならではの洗練さに欠ける」というような不満の声が届いたとのこと。確かに、イギリスの特急・急行用車両の多くはプラグドアで、戸袋付きの引き戸は一部の通勤車両に限られるため、デザインは二の次の実用主義ととらえられても不思議ではない。
今回のロックは通勤・近郊用車両であるが、実際に利用するイタリア人からどんな評価を受けるのか興味深いところだ。
座席配置には苦労の跡が
車内の座席配置に関しては、両車種とも苦労の跡がうかがえる。特にロックはそれが濃厚だ。前述のとおり戸袋部分には窓がないスペースがあり、その部分には座席を配置せず、自転車置き場やベビーカー用スペースなどを設置している。
だが、2階席階段寄りの部分にはロングシートのような横方向の座席がある一方、機器配置や車体構造の都合であろうか窓がない。また先頭車運転席背後の階段付近には、本当に壁しかない4人掛けボックス席も設置されていた。鉄道側の意向により、極力着席定員を増やすための苦肉の策であろうが、この席にはあまり座りたくない……というのが正直な感想だ。
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