空前の「縄文ブーム」背後にある日本人の憂鬱 土偶や土器にときめく心理とは?

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いわゆる「縄文ブーム」と言われるものの萌芽は2009年までさかのぼる。全国各地から選りすぐりの土偶が大量に渡英し、大英博物館で開催された企画展「The Power of Dogu」でお披露目された。2カ月あまりの会期中におよそ7万人の人が足を運び、大盛況となったという。

その凱旋帰国展「大土偶展」が東京国立博物館で開催され、本当に土偶で人が集まるのかという関係者の心配をよそに、およそ13万人の来場者を集めた。その後、2012年には滋賀県甲賀市にあるMIHO MUSEUM「土偶・コスモス」展は会期3カ月間で約6万9000人が国宝を含む200体の土偶を鑑賞した。

この美術館に行ったことがある人が読者の中にどのくらい存在するかわからないが、美術館が立つ場所は滋賀県の山深い場所で、アクセスするのに非常に骨が折れる。そんな場所に土偶を見るために全国から本当に多くの人が訪れている光景はただただ驚くほかはなかった。

裾野を広げる大きなきっかけになったのは2015年に発刊された縄文時代に特化したフリーペーパーにある。その名も『縄文ZINE』。縄文時代をコンテンツの宝庫として、編集長である望月昭秀氏の新たな視点で作られたフリーペーパーが大人気となった。発行部数3万部の冊子は瞬く間になくなり、読者は20代〜30代の女性が多いという。

訪れた人が次々とコメントをシェア

小さくはあるが確実に育っていたブーム前夜の流れの中で、前述の特別展が開催され、考古学の企画展としては驚異的な来場者数をたたき出した。

とはいえ、来場者の多くがもともと縄文時代になど興味がない人がほとんどだったはずだ。もしくは、「最近縄文はやってるみたいだし、ちょっと観てみるか」程度の軽い気持ちで足を運んだに違いない。それなのに、多くの人が「縄文展とても良かった」「2時間じゃ回りきれなかった」「1万年も前にあんなもの作っていてすごいな、縄文人」というようなコメントをしきりに発信した。

いったい、縄文時代の何が今を生きる私たちの心に響いているのだろうか。

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