駅ナカ、商業施設より「椅子」がもっと必要だ 空港ロビーには大きな待合室があるのに…

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駅の中に商業施設が広がる。JR上野駅の「エキュート上野」(撮影:尾形文繁)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2018年12月号「なかなか、駅ナカ」を再構成した記事を掲載します。(文:鍋倉紀子)

「こうやって椅子(いす)があれば腰を下ろしたくなる。立派な椅子ならなおさらだ」

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そう言ったのは『白い巨塔』の財前助教授だが、駅で列車を待つ人も車内にいる人も椅子があればたいてい腰を下ろしたい。

ところが、車内でもホームでも駅構内でも椅子はますます減っている、ように思える。椅子はあるにはある。以前は過剰なほど並んでいた板ばりの薄汚れた長椅子は姿を消し、肘のせまであって定員区分もきっちり、まっすぐ座ることを定義した椅子がこぢんまり置いてある。

無意味なほど長い客車を連ねてやってくる列車も消えた。

そんな駅のホームでは、ただでさえ少なくなった椅子に座って列車の到着を待つ人も実際は少ない。座りたくないのではなく、立って乗車位置に並んでいなければ、たった3両か6両でやってくる列車はつねに混み合っているので、のんきに椅子で待っていたら車内で座れなくなる可能性大だからである。ホームの椅子が少なくなれば大半の乗車位置と椅子との距離も遠くなるので、座る人はますます減る。そしてさらに減る椅子。

椅子、椅子としつこく椅子のことばかり言っているが、今回のテーマは「駅ナカ」である。

薄暗い通路に続く待合場から明るい多角的空間へ

「今度のテーマ、『駅ナカ』はどう?」

いつか編集長にそう言われてどうもぴんとこなかったのは、私が地方都市、さらにメイン駅から外れた、ホームと改札が一つしかない駅のそばに住んでいるからだろう。

「駅ナカ」が指す正確な範囲はわからないが、改札を通らないでも入れる駅構内と、改札を通った人だけが行けるホーム周辺、両方を指すとするなら、わがJR清水駅の「駅ナカ」は非常に簡素である。「駅ソト」に面したASTY清水にはドラッグストアと英会話教室、地銀のATM、パン屋があるほか1階にあった旅行代理店は撤退して吉野家とココイチが入った。「駅ナカ」にある施設はキヨスクのみ、「駅ウエ」であるホームにあったキヨスクはとうの昔になくなり、飲み物の自販機だけだ。

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