駅ナカ、商業施設より「椅子」がもっと必要だ 空港ロビーには大きな待合室があるのに…

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JRより利用頻度の高い静鉄で言えば、新清水駅の改札を出てすぐ、ほぼ駅と一体化して立っていた軽食販売店は廃業し、入江岡駅の細長いホームにあったさらに細長い自販機も撤去されて久しい。「駅ナカ」どころか駅員もいない。このように駅の合理化が著しい町では、町ナカそのものの商店や企業の縮小、廃業も並行して進んでいることが多い。駅ウラの飲食店はもちろん、駅マエの駅ビルからメインストリートにかけても、空き店舗や空地が増える一方だ。

一般的に「駅ナカ」というのは、品川駅や東京駅などで、縦横無尽に進化拡大する華やかなそれを指すのだろう。たまにそんな「駅ナカ」に行くと、びっくり戸惑い、かつて都内に10年近く住んでいたというのに本気で「道」に迷うこともしばしばだ。

かつての駅ナカはそば屋と売店だけ

かつて駅ナカといえば「そば屋」が定番だった(撮影:梅谷秀司)

当時は薄暗く、だだっ広い通路というかただの空間だった東京駅の地下道が、明るくきれいなショッピングストリートになって、乗り換え通路の売店もずいぶん増えた。インバウンドや観光客増でただでさえ人が増えているところに「駅ナカ」の客でごった返して、その混雑ぶりはなかなかのものだ。旅客に頼らない多角的な収入源を求めるのは鉄道会社にとって必要不可欠なことで、かつてはそば屋やキヨスクがあるだけだったところに花開いた「駅ナカ」の貢献は絶大なものと推測できる。

完全に駅の外に面した部分には「駅ソト」に住む住民のための施設を設けているところもあるが、「駅ナカ」はやはり乗降客を対象とした店舗がメインである。一店舗あたりの売り場面積はとても小さい。買い物といっても旅の道中で何か急に必要になった場合の非常買いであるから、その需要はたいして大きくない。だから、もともと買い物なんかするつもりがなかった人のついうっかり買いを狙うため、陳列棚にも商品にも新鮮さとインパクトがつねに求められている。混雑の中、短時間で客と商品をさばく店員にも、狭い店舗にキャリーバッグやスーツケース、子連れで押し合い圧し合い乗り込む客もどこか殺気立っており、即断即決、その買いっぷりも見事で、活気に満ちている。

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