駅ナカ、商業施設より「椅子」がもっと必要だ 空港ロビーには大きな待合室があるのに…

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東京駅一番街の地下にあるトミカショップとプラレールショップ、さらに50メートルほど先にあるウルトラマンワールド M78は、年頃の男の子を持つ親にとって鬼門のような場所だが、そこのトミカショップで子どもが以前から買うつもりでいた道路のパーツを買おうとしたら見当たらない。店員に聞けば、パーツ類は扱っていないという。店頭に並ぶのは真新しい新発売の車両や価格の高いセット商品がメインで、試し遊びをしたりオリジナルトミカを作るスペースも取っているので、地味なパーツ部品なぞ並ぶ余地はとてもないのだ。

それにしても人が多い。通路も店内も人がいっぱいである。

大半が旅客なので手荷物も多い。ちょっと座って休みたいところだが通路には無駄なく店舗がびっしり並んでいて、改札を通るまで、ひたすら歩き続けなければならない。座りたければ、その中の飲食店に入るほかないが、その飲食店に入るのも行列。ようやく改札を通ったところで小さい待合室はすでに人でいっぱい、ホームの待合室も満席。自分が乗る列車がホームに到着して発車ぎりぎりに扉が開き、乗り込むそのときまで椅子はおあずけである。

駅構内のきれいで広くなった通路では絶え間なく人波が流れているが、大きな荷物や子どもを抱え所在なく立っているだけの人もまた多い。

何もせず、ただ列車を待っていたい人もいる

新駅や街づくりを考える人が描く完成イメージ図を見ると、そこにいるほとんどの人は歩いている。人は流動し続けることが前提で空間設計がなされている。しかし、特に駅のような場所で無意味に早く着いてしまった、やむを得ない事情で2時間待たなければならなくなった人、こういう人たちはどこに行けば、いや、どこにいればいいのだろうと思う。狭い待合室で椅子が空くのを待つか、有料で飲食できる店に入らないかぎり、居場所がない。

中国・上海の鉄道駅。大勢の人が椅子に座っている(東洋経済オンライン編集部撮影)

駅で何かができる場所が増え、何かをするための施設を作ってもらえるのはありがたいが、何もしなくていい場所が消えていくのが、いいことなのかどうか。

「駅マエ」や「駅ナカ」で無数の人がぼさーっと座っている風景。それは中国の駅、その広い待合室のイメージだ。荷物の保安検査と改札手続きを乗車時間の1時間以上前に終えた人々は、膨大な数の椅子が並んだ体育館のような空間で、ただひたすらぼんやりと列車の乗車を待っている。お店はわずかにあるが小さく、トイレも1カ所しかない。全国各地、あらゆる方面に向かう列車が順番に到着し、その改札が開くのを待つ人がいるだけのこの空間は旅情に満ち溢れている。

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