銀座線はなぜオレンジ?地下鉄「路線色」の謎 都営三田線は「赤」を丸ノ内線に譲って「青」に

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東京に限らず、複数の地下鉄路線がある都市では路線ごとにラインカラーを定めるのが一般的だ。日本国内では東京に次ぐ地下鉄ネットワークを誇る大阪の地下鉄(大阪メトロ)も当然ながら各路線にラインカラーがある。大阪の地下鉄で路線ごとの色が決められたのは1975年だ。

しかし、色の決め方は東京とちょっと違い、「意味付け」に力を入れて色が定められたようだ。公式資料にはないものの、石本隆一著『大阪の地下鉄』(産調出版)では、筆者の石本氏が大阪市営地下鉄(当時)に取材したものが記されている。一部を引用すると以下のとおりだ。

●御堂筋線:臙脂色(赤)
これは、動脈である。すなわち、人体図でも大事な血管である動脈は赤で示すためであろう。
●四つ橋線:縹色(青)
これは、御堂筋線より海側を走っているからだと言う。しかし、御堂筋線のバイパスでもあり、動脈に対する静脈ということも考えられないこともない。また、堺市の大浜まで特許を持ち、さらに、かつては海水浴で賑わった浜寺までの計画もあったからかも知れない。

このほか、たとえば紫色の谷町線は主な経由地である谷町筋に寺が多く、最高位の僧侶がまとう袈裟(けさ)の色から、緑色の中央線は大阪城公園の緑から……と、それぞれの色に意味があることが示されている。

色彩に見る東西の地下鉄の違い

こうしてみると、東京と大阪の地下鉄のラインカラーには単に東西の色彩感覚の違いだけではなく、2つの事業者が地下鉄を運営する東京と、単一事業者の大阪の違いも感じられる。

東京の地下鉄は、かつては営団と都営で一部のラインカラーが重なることもあったものの、協議の上で重複を避け、それまで親しまれていた電車の色を活かしつつ色彩感覚あふれるラインカラーを採用した。特に東京メトロ各線のラインカラーには、はっきりした色彩が目立つ。

一方、大阪の地下鉄は、ラインカラーが決まる前から各線で電車の色が違った東京と違い、かつては基本的に車両の色は同じだった。それもあってか、ラインカラーを決めるにあたっては当初から意味付けを重視し、路線の性格を「色」で示そうとしたのだろう。色調も東京よりややおとなしい印象だ。

今では当たり前となっている地下鉄のラインカラー。利用者なら、路線名とともにイメージが定着しているであろう各線の色彩だが、その決定にはさまざまな背景や狙い、工夫があったのだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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