デル時代の経験とシステマチックなノウハウを生かす--浜田宏・HOYA COO
2000年当時日本で無名だったパソコンメーカー、デルを業界3位にまで引き上げたのが浜田宏氏。今年4月、デル退社後に2年間務めた事業再生コンサルティング会社リヴァンプの代表パートナーを辞め、HOYAのCOO(最高執行責任者)に就任した。02年以降、産業用部材の好調で成長してきたHOYAだが、この1~2年は伸びが鈍化。08年3月期は6期ぶりの減益決算に転落。浜田COOには、新たな成長牽引役として買収したペンタックスの再生が託される。49歳の敏腕経営者は「第2の創業期」を迎えたHOYAをどこへ導くのか。
--リヴァンプを去り、国際優良企業であるHOYAのCOOという道を選ばれたのはなぜですか。
リヴァンプ時代に、さまざまな製造業の方とお会いしていたら、グローバルでビジネスをしているハイテクメーカーの経営を、もう一度やりたいという思いが強まってきました。そんなとき、HOYAがCOOを探しているという話が来たのです。正直言って、最初は興味がありませんでした。ペンタックスとの統合で騒ぎになりましたし、オーナー系企業だから大変だろう、と。
ところが、鈴木洋CEOら何人かの方とお会いしたら、想像以上に先進的な経営をしているし、オーナー家のエゴといったこととは、まったく無縁な形で経営をしていることがわかったのです。そして話の中で、昨年ペンタックスと一緒になって、今この会社は第2の創業期にいるんだな、と私なりに理解しました。
--変革の必要な時期に、COOとして招かれたわけですね。
そうです。買収したペンタックスは最終製品メーカー。一方、HOYAは素材メーカーです。会社の仕組みや進め方、必要なノウハウというのはやはり違う。企業規模も大きくなり、今までのように鈴木CEO一人ではとてもマネージしきれない。二人三脚でやってくれないかと誘われて、私としてもこれは経営者冥利に尽きると思いました。結局、リヴァンプの仲間にわがままを言って、やらせてもらうことにしました。
--「やるならメーカーで」というこだわりはあったのですか。
こだわっていたわけではないですが、グローバルに展開するメーカーになると、経営のパラメーターが飛躍的に多くなるのです。自社で開発し、生産し、商品の形にして出荷して売る、そしてサポートする。小売りとはまったく違います。もちろん経営の難しさは一緒ですが、複雑さからいって、メーカーのほうが興味をそそられたのは事実。ハイテクの世界で十数年やってきましたからね。
--やはり、デル時代の実績がCOO就任に結びついたのですか。
HOYAは効率経営という点でデルの経営とも非常によく似ています。デルの経営を理解している私なら、すぐになじめるだろうと思ったようです。
実際、非常に似ている。たとえば数値管理です。オペレーションの数値管理など、きちっと客観的なデータを基にして見ていくやり方。それと、徹底的に無駄を省く経営手法。あくまでも地味に、地味にやっていく。本社だって小さいまま。社有車もないですしね。本当に質素なところはデルとそっくりです。
細かいことですけれども、結構会社のカルチャーがそういったところに表れるのです。要するに、効率経営ですよね。それとフラットな組織。無駄な役職がなく、意思決定がスピーディに進むのです。
--デルでの経験をHOYAではどこに生かしていくのですか。
まず、鈴木と私の役割分担ですが、簡単に言うと、長期の鈴木、短中期の浜田という感じです。今、その移管の最中です。
HOYAは今や、カメラ、眼鏡、半導体用部材など、互いに全然違う20近くの独立採算制の事業部があって、非常に複雑になっています。
こういった複雑なオペレーションをマネジメントするためには、きちっとしたシステムが必要です。プライオリティをつけて、いつ、誰が、どこで、何を、なぜやるんだという、アクションプランをきちっと設定する。いわゆるPDCAのサイクルを整然と回していくことが何よりも必要なのです。これがまだ、完全にはできていません。