昼夜フル稼働「寝台電車」は昭和の象徴だった クリームと青の特急「583系」が走った時代
国鉄末期になると、各地の583系は夜行列車の減便や、過酷な運用による老朽化などもあって次々に姿を消してゆくようになり、北陸、東北、九州などでは通勤通学用の419系・715系などに改造されて第一線を退くことになった。一部の583系は大阪―新潟の急行「きたぐに」として運用されることになった。
筆者の最後の583系取材は、鉄道ジャーナル誌の急行「きたぐに」列車追跡だった。その日は忘れもしない2005年4月25日のあの福知山線脱線転覆事故の夜だった。刻々と伝わる事の重大さに取材は中止だろうと思ったが、「予定通りにどうぞ」ということで、気が重いまま「きたぐに」に乗り込んだ。だが、車掌長にあいさつをしてもその後のインタビューや仕事ぶりなどとても撮影することはできなかったし、まばらな乗客にも声をかけることができなかった。
重い気持ちを抱えた筆者をさらに落胆させたのは、583系のツートンカラーの塗装が変更されていただけでなく、車内寝台のカーテンがこともあろうに趣味の悪いピンク系に統一されていたことだった。そこにはかつての583系のイメージは皆無だった。
面影は「サンライズ」に
583系は、引退直前には臨時列車に用いられ「撮り鉄」垂涎の的となったが、残念ながら往年の長編成はなく、583系の魅力は感じられなかった。筆者にとって名車583系の晩年はひときわ寂しいものだった。
日本の鉄道史上に大きな足跡を残した寝台特急電車583系は課題も残しつつこうして消えていったが、1998年に登場した後継車両ともいうべき「サンライズ出雲・瀬戸」285系は現在も活躍を続けている。583系のスタイルを受け継いだというべき寝台電車である。乗車率の高い人気の列車に成長したが、583系からの電車方式の寝台列車技術のたまものであろう。
日本に現存する唯一の夜行寝台列車が「電車方式」という形で残ったことに、筆者には万感の思いがある。今後はこの電車を温かく見守っていきたいと思っている。
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