ITから車載領域に攻めてきたソフトバンク。車両からIT領域に攻めているトヨタ。お互いの陣取り合戦が交差し重なったのが今回だ。敵か味方か。まだお互い探りながらの提携スタートだろう。
「将来に対するビジョンが一致した」と両社とも強調していたが、“同床異夢”の可能性も否めない。孫社長は携帯事業でNTTグループを抜くと公言してきたが、今や株式時価総額や利益では上を行く。数年前からは「いずれトヨタも抜く」と公言しており、トヨタをかなり意識しているのは確かだ。
今年7月の講演では孫社長は「人が運転する自動車は許されなくなるだろう」とも指摘する。一方の豊田社長は今回の会見で「数ある工業製品で唯一愛がつくものがクルマ。単なる移動手段のコモディディ(汎用品)になるのではなく、エモーショナルな存在にしたい」と話しており、孫社長の考え方とは相容れない感じは否めない。
ソフトバンクはGMやホンダとも提携
さらにソフトバンクは今年5月にアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)の自動運転子会社GMクルーズにファンドを通じて22億5000万ドルの巨額出資して約2割を握る。トヨタとGMは自動運転で激しく競い合っており、ソフトバンクが両社を天秤にかける可能性も否定できない。
こうした懸念に対し、会見では宮川副社長は回答せず、「孫に聞いてください」と述べるにとどめ、その後も孫社長が言及することはなかった。またソフトバンクはホンダともコネクテッド関連で提携しており、トヨタ一辺倒ではない。
この日の会見では両トップのトークセッションもあった。創業者と創業家のテーマにもなり、豊田社長が「私は創業者ではない。孫さんにはあこがれる。たたき上げのど根性。アスリートの私はそこを共感している。孫さんに迫ることで、創業者の佐吉や喜一郎に迫るヒントをいただきたい」と話した。
それに対して、孫社長は「(豊田社長は)やっぱりすごい。継承する方が難しい。うまく行って当たり前、うまく行かないとほら見ろになる。次々に新しいことを打ち出して、ご苦労されたと思うが、たくましくはい上がっていく姿は創業者のようだ」とお互いに持ち上げて見せた。
ついに重なり合った異業種の巨人。日本連合で世界を見据えて戦うことはできるのだろうか。
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