阪神電鉄vs甲子園「名物食堂」退去めぐる対立 シーズン終了近いが、「場外乱闘」はまだ続く

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ところが、建物の1つを賃借している日吉食堂は立ち退きに抵抗。阪神電鉄との間で訴訟が起きているのだ。

最後の賃貸借契約締結は39年前

日吉食堂、阪神電鉄ともに取材に応じないため、複数あるとされる訴訟のうち、筆者が閲覧することができた訴訟記録と、地元関係者の証言に沿ってコトの経緯を追ってみたい。

この訴訟の原告は阪神電鉄で、求めているのは建物の明け渡し。被告は野武哲也氏とその母、妹の個人3人と(有)甲子園給食だ。日吉食堂の店頭に立ち、同店名物の関東煮を売っている、メガネをかけた長身の男性が野武哲也氏だと言えば、顔を思い浮かべることができるプロ野球や高校野球のファンは少なくないはずだ。

日吉食堂前に張り巡らされたフェンス(筆者撮影)

その後、日吉食堂は末吉氏から長男の誠之助氏に引き継がれた。誠之助氏は1988年に(有)甲子園給食を設立して個人事業を法人化。誠之助氏は2008年に亡くなり、誠之助氏の長男・哲也氏に引き継がれた。日吉食堂の開業は、うどん屋と同じ1948年。野武哲也氏の祖父・末吉氏が借り受け、食堂を開業した。

あくまで閲覧できた記録からの判断になるが、双方の主張をまとめると次のようになる。

まず阪神電鉄の主張は、「貸している建物を明け渡して退去せよ」だ。

・建物が老朽化していて危険な状態にある
・退去後は自ら使用する
・日吉食堂は阪神電鉄が貸した建物を無断増築し、その分の敷地も不法占拠している
ゆえに退去を求めることには正当な理由があり、立ち退き料も支払う意思がある

というもの。

これに対し、日吉食堂側は、契約解除に必要な通知を受けていない、無断増築かどうかは増築の経緯が不明であり、少なくとも阪神電鉄は50年以上にわたってその状況を黙認してきた。そして阪神電鉄側が提示してきた立ち退き料が安すぎる、という。

契約解除に必要な通知を受けていない、という主張には少々説明がいる。

阪神電鉄と日吉食堂との賃貸借契約書は、1979年4月に誠之助氏が個人で締結したものが最新。このため、そもそも賃貸借契約の当事者が誰なのかについて、阪神電鉄と日吉食堂側では見解が異なる。

日吉食堂を経営しているのは(有)甲子園給食であり、賃貸借契約の当事者でもある。にもかかわらず、賃貸借契約の更新拒絶通知が(有)甲子園給食宛てに来ていない、だから必要な通知を受け取っていない、というのが哲也氏の主張である。

次ページ阪神電鉄側は一度も異議を唱えなかった
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