子会社化の期待と不安--三洋「苦渋」の決断

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子会社化の期待と不安--三洋「苦渋」の決断

11月7日、資本・業務提携の協議を始めると正式に発表したパナソニックと三洋電機。パナソニックは今後、ゴールドマン・サックスなど三洋の大株主金融3社が持つ優先株の取得に向けて、本格交渉を開始。条件が折り合えば、来年春までに三洋株の過半を取得し、子会社化する。

同日午後7時から大阪で行われた共同会見では、「買う側」であるパナソニックの大坪文雄社長に質問が集中。同社長は「厳しい経済環境の中で成長を実現するためには、グループの中にもっと成長のエンジンが欲しい」と買収の意図を語り、三洋が得意とする充電池や太陽電池を有望な成長分野として例に挙げた。

パナソニック以外も検討

その会見に先立つこと4時間前、大阪・守口市の三洋本社。佐野精一郎社長は課長職以上の幹部社員を1階の大会議場に集め、子会社化を決めるに至った経緯を詳細に語った。説明は30分近くに及び、その模様は全国各地の事業所にも同時中継された。

出席した複数の幹部によると、佐野社長は、昨今の金融危機で金融3社による三洋優先株の売却時期が早まり、早急に優先株問題に決着をつける必要に迫られたと説明。再建途上にある同社の経営状態にも触れ、「一部の事業は拠点整理などの追加構造改革が必要で、それだけで何百億円もの資金が必要になる。厳しい金融情勢が続けば、成長のために本来必要な投資にも影響が出かねない」と厳しい現状認識を示したという。

また佐野社長は、提案を受けたパナソニックとの交渉だけでなく、異業種の国内企業による優先株一括引き受けの可能性も探った事実を明かし、限られた時間と選択肢の中で1カ月悩み抜いた末に今回の結論に至ったと説明。潤沢な資金力や世界的な販売網、ITなどの高度な経営インフラを持つパナソニックの支援を得られる効果は大きい、と幹部たちに理解と協力を求めた。

共同会見の席上、大坪社長は「社員の方々の雇用やブランドに対する思いは痛いほどよくわかる」と語り、子会社化後も当面は三洋のブランドや体制を維持する意向を示している。ただし、こう付け加えることも忘れなかった。「経営とは厳しいもので、勝ち残ってこそ意味がある。甘いだけの話はありえない」。

マイクを受け取った佐野社長は「今、当社の中に厳しい実態の事業があるのは事実。進行中の中期経営計画の達成に向け、三洋としてやるべきことは自分たちの判断でやっていく」とあくまで自主性を強調した。だが、子会社化で優先株問題を解消しても、資本の論理がある以上、「自主性」の確約はない。

(渡辺清治 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済)

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