コンビニ「6万店飽和説」は本当にありうるのか 30カ月ぶりの既存店売上高増が意味すること

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業績の悪い店舗をたたみ、常に新規店をつくり続けては、新規開店でお客を増やそうとしている。しかし、そのなかでも既存店はじわりじわりと、立ち寄ってもらえるお客を減らしているのだ。

スーパーマーケット市場では「13兆円の呪い」といわれる。これは、スーパーマーケット市場規模が壁を突破できない事実を指している。日本の世帯数を約5000万とする。そうすると、13兆円÷5000万=26万円になる。年間で26万円ということは、1カ月に2万円ちょっと。もちろん単身世帯などの増加から、この計算式は概算にすぎない。ただし、マクロでみたときには、この26万円を拡大しようとしても、なかなかうまくいっていない。

さらに日本は人口減少国家だから、スーパーマーケットにしても、なかなか市場の急拡大は見込めない。コンビニも「○万店飽和説」がついにあてはまるかもしれない。さしあたって、現在の5万5000店に対して、「6万店飽和説」を打破できるだろうか。

もちろん、現在の方程式が続く場合はまだいい。コンビニ各社の客単価を高くする提案が成功し続ければ、問題はないだろう。しかし、次節で説明するとおり安穏とはしていられない。

冒頭で8月の好調を伝えた。もちろん客数増加自体は喜ばしい。ただし、8月の好調は、冬に悪影響を及ぼすかもしれない。よく、売り上げが好調な時期に正の側面のみが強調される。しかし、消費者にとってみれば、一定の収入で生活しているため、その反動はどこかでやってくる。ある時期に使っても、年間を通してみれば、一定額に落ち着く。つまり、どこかで支出を抑えているのだ。

ちなみによく「○○優勝で、経済効果○○億円」というものの、あのほとんどは代替効果を考慮していない。代替効果とは、何かを消費する代わりに、違う何かには消費しなくなる傾向を言う。厳密に計算すれば、ほとんど経済効果がないことは珍しくない。

より熾烈になるコンビニ各社の生き残りを懸けた戦い

話をコンビニに戻せば、今年では、秋口から冬に節約志向が高まってくる可能性があるだろう。

もちろんコンビニ各社も無策ではない。たとえばセブン-イレブンは、コンビニがオープンできない場所には自動販売機コンビニを設置拡大する。これは、おにぎりやお菓子などを無人販売するものだ。これは、やや形態が異なるものの、ローソンもプチローソンとして提供している。ファミリーマートもASDの名前でおなじく展開している。

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さらにファミリーマートはドン・キホーテと組み、実験的な店舗づくりを進めている。「ファミリーマート PRODUCED BY ドン・キホーテ」の店舗では、あのドンキ流の圧縮陳列が店舗を覆っている。

またローソンは銀行分野に進出し、決済規格を提案するどころか、店舗でふらっと金融商品を“ついで買い”するシーンを想定している。また、セブン-イレブンはアプリを強化し固定客の訴求性をいっそう上げようとしている。

コンビニ各社は自社商品をさらにブラッシュアップし、かつ他の進化も忘れていない。ただ、外資からの攻撃も避けられない。また、コンビニも今後の消費減を待ち構えなければならないかもしれない。消費増税の後は、さらに冬の時代がやってくるだろう。比較的客単価の高いコンビニは食品分野で避けられてしまう可能性があるからだ。コンビニの戦国時代は、ますます激しさを増している。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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