Netflixの「安くて、便利」は永続が難しい理由 「定額制動画配信サービス」に潜むワナ

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Netflixがこだわるのは、独占配信を行うタイトルを途切れさせないことである。視聴者を夢中にさせる作品がNetflixにしかない状態を続けることができれば、ユーザーはNetflixを退会せず、契約を続ける。Netflixがここにこだわるのはビジネスモデルが広告ではなく、ユーザーの定額課金に大きく依存しているから、と言い換えることもできる。

なお、基本無料のYouTubeは必要に応じてユーザーが動画を視聴し、そこで表示される広告がYouTubeに収益をもたらす仕組みである。動画はユーザーが投稿するので調達コストは掛からない。広告収益は投稿ユーザーにも分配される仕組みが用意されているため、YouTuberや、Vtuberのように「広告表示回数が稼げる面白い動画を投稿しよう」というユーザーが集まってくるというわけだ。

それに対して、Netflixはユーザーを飽きさせないよう自らがコストを支払わなければ成立しないビジネスモデルを採用している。「わざわざオリジナルコンテンツを自ら制作しなくとも、映像制作会社からコンテンツを調達すれば良い」というわけにもいかない。アメリカのハリウッドメジャーは、ディズニーのように自らも配信チャネルを抱えているところも多く、競争相手でもあるNetflixに人気のコンテンツを提供してくれるとは限らないからである。

制作・調達コストの最適化にも取り組むNetflixだが、そのコストはオリジナルコンテンツの制作だけで70億ドル(約8000億円)に達する。世界で1億人を超えるユーザーを抱えるも、その伸びは鈍化しており、投資の規模とのバランスの悪さも指摘されるようになってきた。日本では今回初めてだが、海外ではすでに数回の値上げが行われており、今後も値上げが続く可能性もある。

「人気作品」がいきなり消えたAmazonプライム

定額視聴サービスでNetflixや国内勢を押さえ一躍利用率トップに躍り出たのがAmazonプライム・ビデオだ。月額400円という個別の料金メニューも備えるが、利用者のほとんどはeコマースでのほとんどの送料が無料になる年間3900円のプライム会員特典の一環としてサービスを利用しているはずだ。

Amazonプライム・ビデオのビジネスモデルは、このプライム会員に対して「お得感」を演出しつづけ、会員契約を継続し、楽天などライバルサービスへの流出を防ぐこと。また、映像作品に親しんでもらった後で、関連商品をそのままアマゾンで購入してもらうといった相乗効果を期待している部分もある。プライム会員であれば、映像コンテンツを見るために追加の投資は必要ない。Netflixが値上げに踏み切ったなか、この「お得感」はアマゾンにとっての強力な武器となっている。

しかし、そのAmazonプライム・ビデオで、ちょっとした騒動が起こった。配信されていた人気アニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』が、シリーズの途中の話数から視聴できなくなったのだ。

続きが急に見られなくなったとき、『シュタインズ・ゲート ゼロ』のページには驚きを隠せない視聴者のコメントがあふれた(画像:Amazonプライム・ビデオのキャプチャー画面)
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