オールジャパンで鉱山取得、資源企業の寡占化とミタルに対抗

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新日鉄はナミザ権益獲得によって、13年には年間370万トン程度を手にする。07年時点で35%という自社出資鉱山からの鉄鉱石調達比率は、4割強まで拡大する見込みだ。それでも、ミタルとの間に横たわる大きな溝は解消されない。「これ(ナミザ)をもって供給元に大きな力を持ったことにならない」と、鉄連の宗岡会長も力不足を認める。

こうした鉄鋼業界の転換意欲に、経済産業省も重い腰を上げた。

9月29日の午後遅く、経産省本館の会議室に、鉄鋼大手と総合商社の原料トップ、それに国際協力銀行など政府系機関と経産省の幹部たちが一堂に会した。会議の主題は「鉄鋼原料の安定調達について」。これまで鉄鉱石などの鉄鋼原料は経産省の政策支援対象から外されていたが、「川上の寡占化がこれ以上進むと、必要量を買えなくなる可能性もある」(経産省幹部)との判断から、政府と民間との意見交換の場が初めて設けられた。

今後についても「(買収価格は)ひと山1兆円で、1社ではリスクテイクができない。鉱石引き取り量も重要なファクターで、リスクシェアの観点から連携プレーの必要性は高まっている」(前出の経産省幹部)として、ナミザに続く企業連合による権益取得の可能性を示唆する。ある鉄鋼大手幹部は「アラスカやアフリカによい鉱山があるようだ」と、次なる買収候補までほのめかす。

資源立地型の進出続々 主戦場はブラジル

鉄鋼業界の構造転換は、鉱山取得という直接的な川上進出だけではない。07年以降、高炉大手は鉱山のそばに製鉄所を作る資源立地型の進出計画を相次いで発表している。主戦場はブラジルだ。すでに新日鉄、JFEスチール、住友金属工業の3社が名乗りを上げている。

新日鉄は持ち分会社のウジミナスを通じて年産500万トンの新製鉄所建設に着手。沿岸部でも同300万トンの製鉄所建設へ事業化調査を進めており、こちらについては新日鉄本体との合弁も視野に入る。住金は世界首位級の技術力を誇るシームレスパイプで、仏大手との合弁計画を進行中。JFEは、半製品の生産拠点を東国製鋼(韓国)、ヴァーレと合弁で建設する方針だ。

かつての鉄鋼業は、国や地域ごとで生産し、域内で販売するスタイルが主流だった。その中で、日米欧といった一部の鉄鋼先進国が余剰分を輸出し、世界の需給バランスを調整してきた。原料事情も、今と違って、価格、需給ともに安定的だった。船舶で原料を輸入し、臨海部の製鉄所で加工し、製品を輸出する。これが20世紀の成功モデルだった。

ところが、21世紀に入って、新興国中心に世界の鉄鋼需要は1・6倍(07年の01年比)と急拡大。資源価格は高騰を続け、極端な供給不足に陥った。そこで原料の安定調達と輸送コスト軽減を狙い、鉱山のそばに製鉄所を作る動きを強めている。

「日米欧から一方的に輸出するというモデルから変わってきている。輸出するだけのサプライヤーではなく、プレーヤーとしてグローバル化し、現地でモノを生産し販売するビジネスモデルに変えないといけない」と語るのは新日鉄の増田規一郎副社長。

川下重視で、高級鋼などの製品開発に力を入れ、技術力では世界一となった日本鉄鋼業。だが、グローバル化が進展し、資源が希少化する時代に突入した21世紀。原料を安定的に確保する川上重視の経営へ、今大きくシフトしようとしている。


(週刊東洋経済)

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