クルマ社会沖縄に「ゆいレール」は根付いたか 開業から15年、来年夏には延伸開業も予定

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さらに、利用者の動向も特徴的だ。昨年行われた沖縄都市モノレールの独自調査から、思わぬことがわかった。割合が多い順に通勤客約35%、国内観光客18%と続き、その次に多いのは、利用客の14%を占める"帰宅客"、つまり「帰りだけゆいレールに乗る」人たちだったのだ。

観光客の多さも驚きだが、「帰宅」だけの利用が14%もあるのはどういうワケなのだろうか。

国場川を渡るゆいレール(筆者撮影)

ゆいレールやバスがあるとはいえ、沖縄は圧倒的クルマ社会だ。交通分担率も約86%を自家用車が担う。そこで朝は通勤・通学する家族が同じクルマに乗り合わせることが多い。しかし、帰りはそれぞれ別の時間に帰宅するため、帰りだけゆいレールを利用する利用者が一定数いるというのだ。

これはバスも同じとみられ、筆者が夕方にバスで観察したところ、定期利用よりもICカードのチャージや現金での利用が多かった。そのため、経営が厳しかった2009年から2012年の頃には「利用促進のために片道定期を作ることも検討した」(沖縄都市モノレール担当者)という。こうした状況のため、定期利用よりも定期外利用が多い。

延伸区間の開業に期待感

右肩上がりの輸送で順調な運営が続くゆいレールだが、現在の課題は大きく分けて3つあるようだ。

首里―てだこ浦西間の延伸工事の様子(筆者撮影)

1つ目は、首里駅からてだこ浦西駅間4.1kmの延伸開業が予定より遅れていることだ。1977年の計画では短期計画路線として那覇空港から西原入口(てだこ浦西駅付近)の13.1kmが一挙に開通する計画だったが、首里から西原入口までの土地区画整理事業の遅れから建設が後回しになった区間だ。

当初は2019年春開業の予定だったが、土地買収の遅れや建設業の人手不足による入札不調で工事は遅れており、今年9月上旬に延伸区間の軌道がすべてつながった。また、駅員の増員も必要だが、沖縄県内では景気好調による賃金上昇が起きていることもあり、なかなか応募者がいないという課題も抱える。

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