クルマ社会沖縄に「ゆいレール」は根付いたか 開業から15年、来年夏には延伸開業も予定

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しかし、思わぬ障壁が立ちはだかる。モノレール整備のためにはバス路線の再編が不可欠となり、そのためのバス事業者との合意形成に多くの時間がかかったのだ。本来ならば1987年の国体に合わせておもろまちまで開業、1990年に首里まで開業する予定だったが、バス路線再編成とそれに伴う補償によりバス事業者との合意に至ったのは1994年のこと。終わってみれば合意に10年以上の長期間が費やされたことになる。

その後、需要推計や事業採算性の問題を再チェックし、累計損益好転と累計資金不足解消は開業後25年で行うスキームとした。そして1996年にモノレールの工事が着工、2003年に工事が完了し、同年8月10日に開通した。高良の構想から38年、沖縄都市モノレール設立から21年が経過しての悲願の開業だった。

開業後も厳しかった運営

2003年に開業したゆいレールは開業時に1日あたり約3万1000人の利用を見込んでいた。開業した2003年8月こそ1日平均約4万6000人になったものの、ひととおり「お試し乗車」が済むと翌年1月には1日平均約2万7000人にまで利用客が落ち込んでしまう。

しかし、ここから需要喚起策を検討・実施したことや、2004年末におもろまちに観光客向け大型複合施設が開業したことで、2005年度には1日平均約3万5000人まで利用者が増加。その後も順調に利用者は増加する。そして2008年には西原入口(てだこ浦西)までの延伸が決定した。だが、その矢先にリーマンショックが発生、さらに2009年の新型インフルエンザ流行が追い打ちをかけ、利用客数は落ち込んだ。

現在のゆいレールには京急電鉄のラッピング車両も走る(筆者撮影)

こうした厳しい運営を強いられ、ゆいレールは本格的な経営改善に取り組むことになる。2011年1月からはラッピング列車の運行を開始し、2月には運賃値上げを主とした運賃改定を実施、11月には短期借り入れが多かった資金繰りの安定化を図り、2012年1月には中長期経営計画を策定した。

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