体育が「トラウマ」な人につきまとう運動嫌い 授業の思い出が運動への感情を左右していた

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もちろん、競争に勝ったとか満足いく成績を出せたなど、体育の授業にいい思い出がある人もいる。

「(体育の授業に関する)記憶の鮮明さには少し驚かされた」と、研究チームの1人でアイオワ州立大学の大学院生であるマシュー・ラドウィグは言う。「20〜30年前のことなのに体育の授業のことを忘れられないという人たちもいる」とラドウィグは言う。彼によればそうした記憶が現在の運動に対する態度に影響を及ぼし続けているのは明らかだ。

体育教育プログラムの見直しも必要

もっとも本研究の回答者はたまたまアンケートを見つけて自発的に参加した人々で、その回答は平均的なものではないかもしれない。また、記憶と想起に基づいているため、必ずしも信頼度が高くない可能性もある。また、そこから導き出された結論が「逆因果関係」の影響を受けている可能性もある。

つまり、運動をしない子どもは体育の授業も嫌いで体を動かさない大人になるが、それは運動が得意でないからであって、体育の授業が嫌いだからではない可能性があるということだ。

だがラドウィグに言わせれば、本研究の結果からは、運動に対する気持ちが、運動を始めるか運動不足のままでいるかの選択に大きな影響を与えているということがうかがえる。運動に対する前向きなイメージを植え付けるには、学校での体育教育プログラムの軸足を見直したほうがいいのかもしれないということもだ。

子どもにスポーツをやらせるならば「チームは無作為に選ぶべきだ」とラドウィグは言う。特に幼い子どもたちの場合は競争に力点を置くのをやめ、代わりにダンスやヨガといった活動をさせたほうがいい。また、体力テストを頻繁に行うことにこだわるべきでもない。そのせいでやる気を失ったと答えた回答者は少なくなかった。

世間では運動とは呼ばないようなものも含め、子どもにはもっと多くの選択肢を与えたほうがいいかもしれない。「庭仕事もれっきとした体を動かす活動で、チームスポーツよりずっと好きだという子もいるかもしれない」とラドウィグは言う。

「もし体育の授業で体を動かすことの楽しさを子どもたちに教えることができれば言うことはない」と彼は締めくくった。

(執筆:Gretchen Reynolds記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2018 New York Times News Service

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