金正恩が自国をみすぼらしいと卑下したワケ 南北会談での接待攻勢は何を意味するのか

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朝鮮半島非核化をめぐる協議は、休戦中の朝鮮戦争に「終戦宣言」を出すことが先か、北朝鮮が核・ミサイル放棄に着手することが先か、で手詰まり状態になっている。

正恩氏が文氏を最大限に歓待したのは、アメリカ側の譲歩を迫る狙いだろう。アメリカと中国は、厳しい貿易摩擦を起こしている。北朝鮮が伝統的友好国である中国への依存から抜けだし、韓国との経済関係を強めれば、アメリカにとってもマイナスではない。

次の焦点は米朝首脳会談

トランプ大統領は、今回の南北首脳会談の合意について、ツイッターで「非常に興奮する」とさっそく書き込んだ。これも、中国を意識してのことだろう。正恩氏が自分との首脳会談で核施設廃棄を約束してくれれば、中間選挙に向けて、国内での人気浮揚にもつながる。

ポンペオ国務長官の交渉力にも注目が集まる(写真:REUTERS/Lucas Jackson)

この流れからすると、トランプ大統領は、ふたたびマイク・ポンペオ国務長官を北朝鮮に派遣するはずだ。ここで2回目となる正恩氏との直接会談を取り付け、直接会談の場で大きな勝負を掛けようとするだろう。かなり大胆な妥協をしてでも、中国の習近平国家主席に一泡吹かそうとするのではないか。

一方の正恩氏は、トランプ氏を平壌に招き、文大統領以上の歓待を計画しているかもれない。北朝鮮によるド派手な外交ショーは、まだまだ続きがあるのだ。

五味 洋治 東京新聞 論説委員

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ごみ ようじ / Yoji Gomi

1958年、長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞東京本社入社。韓国・延世大学に語学留学の後、1999年から2002年までソウル支局に勤務。2003年から2006年まで中国総局勤務。この間、2004年に北京国際空港で金正男に偶然会ったことからメールのやり取りが始まり、のちに単独インタビューを実現させる。2008年8月から10カ月間ジョージタウン大学にフルブライト留学。現在は東京新聞論説委員。著書に『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋)、『父・金正日と私 金正男独占告白』(文春文庫)など。

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