金正恩が自国をみすぼらしいと卑下したワケ 南北会談での接待攻勢は何を意味するのか
父・故金正日総書記はジョークを言うのが好きだった。2007年に訪朝した盧武鉉大統領を直接出迎えた時のこと。このお礼を盧大統領が口にすると、「大統領がいらしているのに、病人でもない私が家にいるわけにいかない」と即興で切り返した。当時、金総書記は病気と噂されていた。
正恩氏の場合は、自虐ジョークというのか、自国を卑下するせりふなのだが、不思議と嫌味ではない。「率直」という好印象を与えている。
磁石がくっつくようにピッタリとハグ
一方で、文大統領夫妻に対する大々的な歓迎ぶりは、父の時代を大きく超えていた。
まず、韓国側を驚かせたのは、平壌国際空港での出迎えシーンだ。空港には正恩氏と李雪主夫人が黒っぽい服装で現れた。
正恩氏が外国からの賓客を夫婦で出迎えるのは初めて。文氏と正恩氏はその場で、磁石がくっつくようにハグした。
4月の会談では握手だけだった。5月の首脳会談では不慣れな様子でハグしている。親子ほど年齢の違う2人の距離は、かなり近くなったということだろう。
文氏は、空港で整列していた約300人の朝鮮人民軍や音楽隊の前を歩いた。その間、礼砲21発が発射された。北朝鮮軍が韓国首脳に対して、礼砲を使ったのも初めてのことだった。
この日の最高の見せ場は、2人の首脳による平壌市内のオープンカーパレード。黒いベンツに乗った2人は、3大革命展示館から黎明通り、錦繍山太陽宮殿など平壌自慢の町並みを走った。
沿道には10万人余りの市民が待ち構え、北朝鮮の旗と、朝鮮半島を形取った「統一旗」を振り、「祖国」「統一」と声をからした。外国からの賓客には、その国の国旗を振るのが慣例だが、北朝鮮は韓国を国として認めていない。そのため、「統一旗」で代用したようだ。
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