「響-HIBIKI-」の天才少女は現実にあり得るか 芥川賞と直木賞の同時獲得が極めて難しい訳
2018年9月14日、人気コミックを実写化した映画『響 -HIBIKI-』が封切られた。原作は、柳本光晴(やなもと・みつはる)の『響~小説家になる方法~』。いまも『ビッグコミックスペリオール』に連載中だが、昨年、漫画好きの有志たちによる「マンガ大賞2017」に選ばれるなど、すでに数多くの読者を魅了している。
今回、主人公の鮎喰響(あくい・ひびき)を演じるのは、アイドルグループ「欅坂46」の平手友梨奈。原作者自身がキャスティングを希望したといい、これが映画初出演になる。
それだけでも話題性満点の作品だが、内容もまた評判どおりに面白い。文芸誌『木蓮』が主催する新人賞に、一編の手書き原稿が送られてくる。題名は「お伽の庭」。ずば抜けた文章力。圧倒的な世界観。編集部の花井ふみは、あまりの才能の出現に驚愕する。その小説の作者こそ、文学を愛し、周りに惑わされることなく、自分の感性を信じて行動する女子高生、鮎喰響だった。物語は、彼女の高校生活と、文芸をとりまく世界とが交錯しながら進んでいく。
そこに象徴的な存在として登場するのが、芥川賞と直木賞。言わずと知れた、実在の文学賞だ。この2つの賞は、現実の世界でも年に2回、発表のたびにマスコミに取り上げられ、まず知らない人はいないというくらいに有名だが、『響』の作中でも、その事情は変わらない。
「お伽の庭」が、両賞の候補に選ばれたことが発表されると、一気に騒ぎが過熱する。しかし、面倒なことを好まない響は、取材を受けるつもりがない。すべて『木蓮』編集部のふみが対外的な窓口となり、正体を明かさないいわゆる覆面作家として、普段どおりの生活を続けていく。
15歳で「芥川賞」を受賞するのは夢物語ではない
野暮を承知で、『響』の世界と芥川賞・直木賞のこれまでの実例と、あえて重ね合わせて見てみたい。
文学賞は、本もしくは作家の宣伝の場としても機能してきた。知らない人の書いた小説を、お金を出して読んでみようという人は、決して多数派ではない。作者の履歴や容姿、人となりをきっかけに、小説に興味を持ってもらう、というPR方法は、いまでも有効な手立てとなっている。
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