消化試合の総裁選、進次郎は結局どう動く? 首相圧勝ムードの中で唯一の波乱要因だが…

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そうした中、首相は7日午前9時前、首相公邸から官邸への移動の際に記者団から心境を問われると、軽く右手を上げて笑顔で「おはようございます」と語り、執務室に入った。総裁選告示と並行して政府は7日午前、首相官邸で関係閣僚会議を開き、首相は「救助部隊が夜を徹して救出救助活動に当たっている。態勢の機動的強化を行い、人命救助に全力を尽くす」と決意を示す一方、道内の停電に関して、「火力発電所の運転再開などに全力を挙げてほしい」と指示した。こうした対応は党内から「災害復旧に専念することで、政権担当能力をアピールする思惑」(自民幹部)と受け取られている。

一方、石破氏は7日午前、衆院議員会館で記者団に向かって、「自民党はいかにあるべきか、未曽有の国難の中でこの国をどうしていくか。この道筋を安倍総裁と議論したい」と、総裁選での政策論争の重要性を力説。記者団から漢字1文字での心境表現を求められると「真(まこと)」と答えた。首相と石破氏の総裁選でのキャッチフレーズはそれぞれ、「責任と実行」「正直と公正」だが、誠実の「誠(まこと)」でなく真実の「真」を選んだのは、首相への強い対抗心と批判の表れとみる向きが多い。

石破氏は6日の派閥会合で、北海道大地震への対応のため1週間程度の総裁選延期を提案する一方、「(論戦が)粗略にされていいということは全くない」と、改めて公開討論などでの首相との直接対決の場を増やすよう主張した。結果的に3日間の活動自粛となったことに、石破氏陣営は「『論戦をすれば勝てない』とびびったのでは」(幹部)と揶揄するが、首相サイドは「党より国民の安心、安全を優先するのは当たり前」(麻生派幹部)とやり返す。

名宰相目指すなら「横綱相撲」を取るべきとの声も

しかし、自民党1党支配の中での総裁選は、実質的に首相を選ぶ場でもある。「災害対応と切り離して、首相と石破氏が経済や外交政策について国民の前で討論するのは、極めて重要」(首相経験者)であることは間違いない。

相次ぐ大災害で石破氏は「防災省創設」も提起している。その一方で首相は、憲法改正の早期実現への意欲を繰り返し、総裁選後の臨時国会への自民党改憲案提出を公言している。いずれも日本の未来を左右する重要課題であり、双方が「骨太の議論」を主張するなら、「総裁選での論戦に最大限の時間を割くのは当然で政権党の責務」(同)というのが、政界での常識でもある。

にもかかわらず、総裁選での首相圧勝を前提に、「逆らったやつは人事や選挙で報復する」(二階派若手)など“ヤクザまがい”の言葉が飛び交い、総裁選後の党・内閣人事を視野に入れての猟官運動が党内にはびこるのは、「長く続いてきた1強政治の弊害」(自民長老)ともみえる。このため、党内良識派の間では「首相が歴史に残る名宰相を目指すなら、挑戦者に対して常に堂々と受けて立った、かつての双葉山関のような“横綱相撲”を取るべき」との声も広がり始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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