消化試合の総裁選、進次郎は結局どう動く? 首相圧勝ムードの中で唯一の波乱要因だが…

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その一方で、約100万人の党員・党友の郵送投票は、総裁選の序盤に集中するとみられるため、実質的には「論戦なき総裁選の様相」(石破派幹部)となる。さらに、こうした地方票は今回、投開票日の20日に党本部が集計、所属議員の投票と併せての開票となるため、「今回は議員票への影響もほとんどない」(党事務局)とみられている。

首相と石破氏の推薦人代表は、それぞれ橋本聖子参院議員会長と尾辻秀久元参院副議長であり、いずれも陣営の選対本部長を務める。総裁選での党内勢力図として注目される推薦人名簿をみると、首相の陣営は細田、麻生、竹下、岸田、二階、石原の6派閥の幹部らや無派閥議員を網羅している。これに対し、石破氏陣営は過半数の11人が石破派で、参院竹下派が5人、残る4人は衆院無派閥組で、党内では“反安倍”の立場を鮮明にしている村上誠一郎元規制改革担当相らが名を連ねた。

自民総裁選は今回から地方重視などを理由に、「国会議員票」と党員・党友による「地方票」を同じ比重にし、それぞれ405票の計810票で勝敗を決める仕組みに変わった。第1回投票で過半数を得た候補がいない場合、議員と47都道府県代表による決選投票となるが、今回は一騎打ちのため、1回戦で得票の多い候補が当選となる。

ただ、告示前の段階でも主要派閥の大半が首相支持を決め、70人を超える無派閥議員の多くも首相支持を明確にしているので、議員票での首相支持は9割に迫る勢いだ。6年前の総裁選で地方票で首相にダブルスコアに近い大差をつけた石破氏は、今回も地方票に活路を求めるが、多くの党員・党友を抱える自民支持団体の組織票は首相に流れるとみられているため、首相陣営は「地方票でもダブルスコア以上」と自信満々だ。

首相にとって、国会での解明が全く進んでいない「モリ・カケ疑惑」などの弱点も少なくないが、年初来、首相サイドが周到に進めてきた「3選戦略」は、通常国会閉幕直後の岸田文雄政調会長の総裁選撤退宣言と首相支持表明で結実し、その時点で「総裁選そのものが首相3選のための消化試合」(自民長老)となった。さらに、最後まで出馬に意欲を見せた野田聖子総務相も首相陣営の締め付けで推薦人が確保できずに出馬を断念、首相支持に回ったことも「ダメ押し」(同)となった。

注目の進次郎氏も最後まで「ダンマリ」説

そうした中で唯一の波乱要因は、国民的人気で首相や石破氏をしのぐ“スーパースター”の小泉進次郎筆頭副幹事長の動向だ。だが、告示日前日までニュージーランド訪問で国内不在だった小泉氏は、6日午後の帰国時に記者団に対して、「今は災害対策なんじゃないですか。災害対策最優先でしょう」と、あえて総裁選への言及を避けた。

同氏は6年前の総裁選では、投開票直後に石破氏に投票したことを明かしただけに、週刊誌で「小泉氏が8日に石破氏支持表明」との憶測記事が掲載されたが、同氏周辺では「総裁選全体への影響を避けるため、投開票後も支持を明かさないのでは」との観測も広がっている。

3年後の次期総裁選での立候補も取りざたされる小泉氏だけに、今回の対応は「将来の総理・総裁候補としての資質が試される」(党幹部)との側面もある。石破氏陣営は公然と秋波を送り、首相サイドも水面下で必死に動向を探っている。もっとも、首相の政治手法に批判的な同氏の父親の純一郎元首相もここにきて沈黙を守っており、永田町では「北海道地震など相次ぐ災害を理由に、父子ともダンマリ戦術を決め込むはず」(有力政治評論家)との見方も広がる。

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