安倍陣営が進める執拗な「石破つぶし」の中身 離反しそうな議員を周到に取り込み

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では議員票と同じ405票の地方票(党員票)はどうなのか。安倍首相は9月1日、徳島を訪問。「消費者行政新未来創造オフィス」などを視察するとともに、自民党県連主催の会合に参加した。

実は徳島県は石破派の牙城である。徳島1区の後藤田正純衆議院議員と比例四国ブロックの福山守衆議院議員は石破派に所属しており、2012年の総裁選では徳島県連が持つ4票のうち4票すべてが石破氏に投じられている。今回の総裁選では、そうした石破カラーを払拭しなければならない。

一方で石破氏は、少しでも情勢を好転させるべく有利と思われる地方を回り、9月2日には盟友たる中谷元元防衛相や山本有二前農水相とともに高知市で街頭演説を行った。高知と徳島は2年前の参議院選から合区になり、高知県選挙区から出馬予定だった中西哲参議院議員は比例区に鞍替えして出馬し、当選後に石破派に所属した。さらに参議院額賀派(当時)にも参加して話題にもなっている。

気になるのは「内なる敵」

だが石破氏が逆転して当選するのはほぼ不可能だ。そもそも「石破総裁待望論」がピークだった2012年の総裁選でさえ、石破氏が獲得した地方票は全体の55%を占めたにすぎない。議員票の80%以上を押さえたといわれる安倍首相に対抗するためには、地方票でさらなる積み増しが必要になるだろう。

しかしながら、安倍首相にはずっと付き合わなければいけない「爆弾」がある。持病の潰瘍性大腸炎だ。

「難病の患者に対する医療等に関する法律」で指定難病とされた同病は、原因がいまだ不明で確固たる治療法が確立されていない。寛解と増悪を繰り返すが、安倍首相が第1次政権を放棄したのは増悪期だったと言われている。

第2次政権になって、優れた治療薬のおかげで激務もこなせるようになった。だが時折、安倍首相は体調の悪さを見せることがある。9月2日は新宿のホテル内での理髪店で散髪する以外、何もせずに自宅で静養していた。

翌3日の選対本部発足式には参加したものの、あいさつは冗長なうえに失業率を減らし有効求人倍率を上昇させたという、過去の業績の話を無秩序に述べるのみだった。これでは将来の展望はほとんど感じられるはずもない。

安倍首相にとって内なる敵と外の敵では、内なる敵のほうが手ごわいのではないだろうか。総裁選の投開票日である9月20日まで約2週間余りだが、内なる敵は外の敵のようにたやすく操縦できないだけに厄介といえそうだ。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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