「女子」と「おじさん」が示す日本人の思考停止 意味もなく濫用されすぎていないか

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山田:そうなんですよね。完璧にちゃんと理解してないと、怖いから、結局もうそこを大きく迂回するしかなくなる。結果、言葉のパンチ力が弱まって、面白くなくなる。

スー:そうすると変な校則じゃないけど、ひざから5センチ下より短い靴下履いちゃダメみたいなわけわかんないルールを、思考停止のまま守っていくことにもつながりかねない。日本はそういうのが得意だから。だから表現者もそうだし、メディアも何か抗議を受けたときに、ちゃんと反論できる言葉がないといけないんです。根拠が必要ですよね。

山田:そこでちゃんと返せる理論というか、筋があれば。

女性からも自分を落とした提案が

スー:テレビと比べてラジオのほうがリベラルだということはまったくないので。どっちかというと古い考え方がしみ付いていたり、男尊女卑的なことも全然ある。

ジェーン・スー(Jane Su)/1973年、東京生まれの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。2018年5月現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のMCを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『今夜もカネで解決だ』(朝日新聞出版)など。コミック原作に『未中年〜四十路から先、思い描いたことがなかったもので。〜』(漫画:ナナトエリ、バンチコミックス)がある(写真:新潮社写真部)

山田:ラジオで言えば、おじさんのパーソナリティーが、若い女性アシスタントの子を、上からいじるみたいな。定番の組み合わせだし、実際僕もそういう番組やってますが(笑)。

スー:女性の私がメインパーソナリティになった時、それだけで番組を聴かなくなっちゃった人もいたと思うんですよ。もちろん男性をひとまとめにして攻撃するような話はしていませんが、そう感じる人もいたでしょうし。こうやって構造も変わっていく中で、それに反発する人もいる。だからこそ発信する側が芯食った理解をしていないと、「自粛の未来」しかなくなってしまう。

山田:何かに抵触すまいとして、発信の幅がどんどん狭くなっていく。

スー:世代や性別で住み分けられた村があるとして、そこを越境してみんなで楽しいことを共有したい。それができなくなると、つまらないと思うんですよね。でも、越境の仕方が「ほかの村のルールでも、そのままうちの村で通用します」だと、それはそれで違うなと思って。

たまに女性から「私たちこういう笑いもわかるのよ」みたいな感じで、女性である自分たちをガツンと落とした内容の企画書をもらうことがあるんです。こういうのも私たちは平気なんだっていう、傷つかないっていうことが新しさの提示だと思っているのかな。もしくはそれが自分たちを傷つけると気づいてないか。そういう企画が来たときは、女が女を下げるのは完全なディストピアではないかという怒りを丁寧に書いてお送りしてるんですけど。

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