高齢者の異常運転事故は「現代の不条理」だ

逆走や踏み間違いへの対策を早急に行うべき

さて近い将来、たとえば5年後の、75歳以上の運転者による死亡事故件数の、大まかなイメージをつかんでみよう。警察庁による2021年までの75歳以上の免許保有者の推計は、今後の逓減(免許返納によるものか)を見込み、増加率を減じつつ増加としている。75歳以上の免許人口は2016年の513万人から、今年約540万人、2020年は600万人、2021年は613万人となっている。このペースの増加であれば、軽視はできないにせよ、激変というほどではない。

より大きなポイントは、75歳以上にくくった年齢層の内訳である。死亡事故発生率は、80歳以上で特に高い。2017年では10万人当たり10.6%と、75〜79歳の5.8%に対し2倍近くに跳ね上がっている。

そこで80歳以上に着目すると、前述のように、今後は年齢層の推移に伴い運転者の急増が見込まれる。仮に、今後5年の間に、80歳以上の運転者とその死亡事故件数235件が倍増するとし(+235)、さらに75〜79歳の運転者は100万人増加して、今と同じ10万人当たり死亡事故頻度は5.8%が続くとすれば(+58)、合計して75歳以上の死亡事故は約300件増加し、750件程度になる可能性がある。これは年間平均で約10%、60件程度の増加ペースである。

わが国の死亡事故約3200件が、年間100件強の漸減傾向にあることを考えると、75歳以上の高齢層事故が、年に60件程度増加しても、全体では増加しない可能性が高い。まとめると、今後の高齢者による死亡事故は、免許保有率の高い層の高齢化により増加に転じる可能性があるが、量的に国の総死亡事故数を増加させるほどのインパクトはないと見込まれる。

「不条理な事故」は高齢者に多い

では次に、質的な側面を見よう。冒頭に挙げた事例は、「こんなことをする人に、自動車の運転をさせてはいけない」と強く感じさせる。これを、「不条理」な事故と呼ぶことにしよう。その特徴は、以下の3点であろう。

  • ① 運転行動の異常性が許容範囲を大きく逸脱している。

  • ② 結果が重大である。

  • ③ 予測不能の事態で被害者が身を守ることが不可能または困難である。

不条理な事故は、そんなことが起きてよいのか、どうして防げなかったのかと、理屈や統計とは別のやり切れない思いを人に投げ続ける。不条理な事故は、高齢者に多いのか。比率のみならず、件数的にもその傾向は明確である。「逆走」と「アクセルとブレーキの踏み間違い」を例に見よう。

2011~2016年の「逆走」のデータがある。免許人口10万人当たりで、20~60代では軒並み0.1~0.2件未満であるのに対し、75~79歳では1.41件に跳ね上がり、さらに80~85歳で2.47件、85歳以上に至っては3.86件と、30代の約50倍に突出する。なお上記6年間の逆走の全数は1283件、年平均で213.8件である。うち75歳以上によるものが半分弱、65歳以上では3分の2以上を占める。

次に、「アクセルとブレーキの踏み間違い」による2017年度の死亡事故を見ると、75歳以上が27件で、75歳未満の年齢区分合計の20件を上回る。2011~2015年度平均では、踏み間違い事故の大半、78.8%を65歳以上が占めている。「逆走」、「踏み間違い」のいずれも、75歳以上が「主役」となっている。

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