武者氏「米中貿易戦争はアメリカ完勝になる」 いずれ日米の株価は「もう一段の上昇」へ

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このように世界中と通商問題で対峙し、高関税をかけることで相手から譲歩を得ようとするスタンスは、ともすれば孤立主義に見られるのは事実ですし、論者の一部からは、アメリカの保護主義的な態度が世界経済のブロック化を進め、世界恐慌から第2次世界大戦の悪夢を招いた歴史の再現になるのでははないかと懸念する声も上がっています。

しかし、アメリカが孤立主義・保護主義的な政策をさらに強め、極端な話、国を閉ざすことまでできるかといえば、それは不可能です。何しろアメリカの必要物資(財)は、9割が海外からの輸入に頼っています。

またアメリカ企業は世界中(中国を除く)のインターネット空間を支配し、世界中から富をかき集める仕組みを構築し、それがアメリカの経常収支を大きく改善させています。

アメリカの国益は、孤立主義・保護主義の対極にあるのです。そしてトランプ大統領は、もちろんその事実を知っています。知ったうえで、中国からの輸入品に対して高関税をかけ、揺さぶりをかけているのです。つまり、トランプ大統領の保護主義的な発言は、あくまでもトランプ流の戦術にすぎず、本質的な戦略は、あくまでもグローバルなのです。

WTOは機能したのか?

現在、トランプ大統領は日本をはじめとした諸外国と、二国間による話し合いを中心にして、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を順次、締結しようとしています。

これは明らかにGATT(関税および貿易に関する一般協定)と、その流れを汲むWTO(世界貿易機関)の精神に反します。なぜなら、WTOは国際的な貿易のルールを決めるにあたって、加盟国の全会一致を前提にしているからです。二国間でFTAやEPAを交渉し締結すると、ほかの国の排除につながるおそれがあると考えています。だからこそ、WTOは何を決めるにせよ、多国間交渉による全会一致を原則としているのです。したがって、トランプ大統領が推進している二国間交渉は、WTOの精神に反するもの、ということになります。

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