下着の色を問う「理不尽校則」が跋扈するワケ 保護者意見の忖度か、合理的な理由はあるか
荻上:校則の問題は、30~40代の私たちが子どもの頃から存在しています。問題事例を次世代に残さないようにするのは前世代の役割だと思うので、プロジェクトを立ち上げて調査を行い、それが今回の本の出版につながったわけです。
ブラック化の背景にあるさまざまなニーズ
――細かな規制による管理が進んだ背景として、内田さんは「学校現場では、ベネフィットをリスクよりも優先してしまう」という問題を指摘されていますが、これはどのような?
内田:僕はこれまで柔道事故、組み体操事故、部活動の過熱などについて取り上げてきました。これらも校則も、「教育的にいいものだ」ということで学校側がやっているわけですよね。だから問題が見えなくなってしまうところがある。
日常生活では、「ベネフィットが大きいからやろう」とか「リスクが大きいからやめよう」などと、ベネフィットとリスクをてんびんにかけて考えたり判断したりしますが、教育の現場では活動全般がベネフィットです。その結果、明らかに人権侵害であるというリスクを軽視して、問題のある校則や指導を行ってしまう。
――チキさんは、どんな背景があると考えられますか?
荻上:いま校則による縛りが増える背景には、学校のさまざまなニーズがあります。教員の数が少なく、個別の指導が難しいため、トラブルが起きるとその対処に多くのコストがかかってしまう。そのコストを避けるために、画一的な教育手段を求め、そのニーズが校則というものを強固にしていく流れになっているんだろうと思います。
それから、少子化が進んで学校選択制の動きも広がるなか、学校が「うちの生徒たちは、こんなにしつけが行き届いていますよ」ということを世間にアピールする流れも生まれています。「うちの生徒はみんな校則を守っていますよ」とか「見てください、みんな髪の毛が黒でしょ」といったことを学校のセールスポイントにする。先生は一人ひとりを取りこぼすことなくしっかり見ていますよ、というアピールになっているんですね。
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