デフレ再来--高額ブランド品にソッポ、100円バーガーなど「安さ」に消費が集中

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 そして、こういう後退期には強い会社がいっそうシェアを伸ばし、効率の低い弱い会社の淘汰が進んでいくという。「家電量販におけるヤマダ電機、衣料におけるファーストリテイリングなどがその典型。市場環境がよいときには、効率の低い店にも客が来るが、環境が悪くなると消費者の見る目が厳しくなり、高効率の店に集中していく」(正田氏)。

既存の高効率店ばかり伸びているわけではなく、新規参入もある。9月13日に銀座に日本1号店をオープンしたスウェーデンの衣料専門店「H&M」には連日のように行列ができている。米国のGAPが日本では価格を高めに設定しているのに対し、H&Mは日本でもリーズナブルな価格設定を行っていることから、「安くておしゃれ」のイメージが早くも定着しつつある。
 
 個別の製品ジャンルを見ても同じ傾向がある。見回すと、全体市場が厳しい中で、売れている商品には共通項がある。正田氏の言うように「実質」が強調されているような商品だ。自動車全体は史上まれに見る売れ行き不振だが、ホンダ「フィット」、トヨタ自動車「ヴィッツ」を代表とする小型2ボックスカー、スズキ「ワゴンR」を代表とする軽自動車については、比較的堅調な売れ行きだ。任天堂は「Wiiフィット」に続き、DSに対応する「万歩計」を発売。健康という「実質」を強調することで、幅広い年齢層に訴求している。

パソコンも、同じ傾向がある。全体市場が伸びない中で、インテルの低価格プロセッサーを用いた5万円前後の小型ノートパソコンが好調な売れ行きを続けている。アップルのノートパソコン「マックブック」が好調なのも、低価格が一つの要因。「14万8800円と15万円以内の低価格ゾーンに納めておきながら、機能を削っていないのが好調の秘密」とアップル広報部は解説する。確かに、同じスペックで見ると、他社のノートパソコンは25万円以上することがザラ。ウィンドウズとマックという違いはあるが、アップルの安さは、多くのパソコンユーザーを引きつけている。

資源価格が下落に転じ、円高が進行する中で、これからは多くの製品価格が下がっていく。100円ハンバーガーに象徴される“デフレ消費”の時代が、より強烈な形で再燃することになりそうだ。


(週刊東洋経済)
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