あのデトロイトショーが6月開催に移る真相 CESに押され、毎年1月開催の恒例を変える
そして今年、2018年のデトロイトショーには、ポルシェ、フェラーリ、ボルボ、ランドローバー/ジャガー、BMW MINI、マツダ、三菱自動車が出展を見送る事態となった。
毎年デトロイトショー初日の早朝に、会場内でアメリカのカー・オブ・ザ・イヤーの発表が行われるのだが、この年の受賞は乗用車部門ではホンダ「アコード」、SUV/ミニバン部門ではボルボ「XC60」が大賞を取った。にもかかわらず当のボルボが出展していない、という異例の授賞式になったのは象徴的だった。
GM、フォード、メルセデス・ベンツ、ホンダ、フォルクスワーゲン(VW)などは、今年のデトロイトショーへ出展はしたものの、会期中の記者会見を行わず、いつもなら2日間にかけて行われる報道関係者向けのプレスデーが実質、初日だけで終わってしまった。
会場の中には出展メーカーが減ったことによる空き地もところどころに見受けられ、閑散とした会場で日本人の業界関係者同士が顔を合わせると「どうなっちゃうんでしょうねぇ、デトロイト」があいさつ代わりとなっていたそうだ。
実は、今年の春ごろから「デトロイトショーは、CESと被る1月から開催時期を移すらしい」といううわさが流れていた。そしていよいよ正式発表され、単に時期を移すだけではなく、屋外イベントと組み合わせてフェスティバルへと変化させることが宣言された。
世界で最も早くモーターリゼーション、つまり自動車の大衆化が始まったアメリカでは、モーターショーの開始も古く、最も古いニューヨークオートショーの初回はなんと西暦1900年で、とっくに100年以上の歴史を形成している。
1900年というと日本だと明治33年、日露戦争の4年前だ。あの時代に日本で自動車を私有していた人がどれほどいたか統計もないが、アメリカではすでに世界初のモーターショーがマディソンスクエアガーデンで開催されていた。
繰り返しになるが、夏にアメリカでモーターショーは開催されてこなかった。デトロイトショーが6月に開催するということはモーターショーの皮を脱ぎ、別のイベントに脱皮を迫られることも意味する。これを強力に推したのが地元のGMという話だ。6月初旬には毎年、GM主催のインディカーのデトロイトGPが、近傍のベルアイル島の公道で行われるが、これとの連携も含めて、北米版グッドウッドを目指しているものと思われる。
開催期間変更のメリット・デメリットは?
昨今、ディーラーで商談するのが苦痛である、という人が増えている。日用品から衣類、食品までネット購買が増えている中で、自動車だけはいまだにディーラーで“値切り”交渉をしなくてはならない。これは、ワンクリックで翌日には商品が届くことになれた人々には苦痛以外のなにものでもない。
アメリカではTrueCar.comのように、購入希望者の地域での平均値引きや最大値引き幅、メーカーからの卸価格、ディラーマージンまでがわかるインターネットサービスが台頭している。そしてどのディーラーも店舗でセールスにあたる部隊以外に、ネット商談にあたる専門のグループを置くのが当たり前になっている。今は店舗に行くのは最後にクルマを取り行くときだけ、という買い方も可能だ。
それでも、数百万円の買い物をするにあたって現物は見ておきたい。そのため、各社のクルマを一度に見ることができるモーターショーで、購入する車を決める、という若者が増えているという調査結果がある。
であるならば、マイナス10度以下も珍しくない1月のデトロイトでクルマを屋内に展示をするよりも、気候のいい6月のデトロイトで、屋外でのフェスティバル形態のイベントに転進するのは、こうしたネット購買層や家族連れを引きつけるためには正しい方向性だと筆者は考える。
実は東京モーターショーも開催時期を定位置の10月末~11月初旬から11月末~12月に変更したことがある。リーマンショック後の入場者激減に慌て、会場を急きょ幕張から、都心から近いビッグサイトに変更した2011年と、その次の2013年だ。急に会場変更をしたので、ビッグサイトが空いていなかった、というのが真相だ。だがLAショーや中国の広州ショーと時期が重なり、海外メディアからはいたく不評であり、2015年からは定位置に戻っている。
展示会にとって、開催時期の変更は勇気のいることだが、家電ショーに押されての苦渋の判断であったかもしれない。大衆と自動車を結ぶ新しいコンタクトポイントの創造になることを祈りたい。
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