便利?東急「預金下ろせる券売機」は使えるか

来春ほぼ全駅で開始も利用できる銀行は一部

もっとも、預金の払い出し業務を銀行以外の事業者が行う行為については、実務上は銀行を代理する行為ではなく、事務の外部委託として扱われ、銀行代理業の許可を受けていない事業者にも委託できる制度になってはいた。

しかし、銀行を代理する行為ではないという点について、法的な裏づけが不明確だったため、制度上は委託できる対象を銀行以外では証券会社やクレジット会社などに限定。なおかつ現実には委託自体ほとんどされてこなかった。

普段意識することはほとんどないが、コンビニやドラッグストアに、当たり前のように設置されているATMは実は銀行のATMだ。セブン-イレブンの店舗にあるのはセブン銀行のATMだし、イオンやウエルシアなどイオングループのドラッグストアの店舗内にあるのはイオン銀行のATM。

ローソン店内のローソンATMや、ファミリーマート店内のイーネットのATMなどは、一見すると銀行ATMに見えないが、実際は各銀行の共同ATMで、ATMごとに管理銀行が定められている。運営主体はあくまで銀行であって、銀行はコンビニに業務を委託しているわけではなく、コンビニは単に場所を提供しているにすぎない。

だが、駅の券売機の運営主体は鉄道会社。今回のサービスが可能になったのは、昨年4月に制度改訂があったからだ。

金融庁の「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」が、2015年12月22日に提出した報告書で、法的にも規定すべきと提言。実務上の調整を経て、昨年4月1日施行の銀行法施行規則改訂で、預金の払い出し業務を、「銀行を代理する行為」ではなく「事務の外部委託」とし、なおかつ委託できる範囲を大幅に緩和。業務遂行能力や顧客情報の管理能力など、一定の要件を満たしていると銀行自身が判断した事業者に委託できるようになった。従って、東急は横浜銀行とゆうちょ銀行から委託を受けることができれば、当該サービスに参入できる。

ちなみに、JR東日本の各駅に設置されているATM「VIEW ALTTE」は制度改正以前から預金払い出しが可能だったが、これは(株)ビューカードというクレジットカード会社に、銀行が預金払い出し業務を委託したものであって、JR東日本という鉄道会社に委託したものではない。

収益追求は二の次

昨年の規則改正は、ATMの設置台数が少なくコンビニもない過疎地の高齢者が、スーパーのレジや病院の自動精算機などで現金が引き出せるサービスを想定していたが、八丈島では観光客の利便性向上を目的に、空港ターミナルビルやホテル、スーパー、タクシーの車内などで現金が引き出せるサービスが始まっている。

左から、ゆうちょ銀行の村島正浩専務執行役、東急電鉄の高橋和夫社長、横浜銀行の前迫静美常務執行役員、GMOペイメントゲートウェイの相浦一成社長(撮影:尾形文繁)

一方、首都圏のど真ん中を走る東急の沿線には多くの銀行ATMとコンビニがあり、横浜銀行とゆうちょ銀行の預金引き出しのみの機能がどの程度利用されるかは未知数だ。その点は東急自身も自覚しており、キャッシュアウトサービスで収益を取りにいくというスタンスではない。「稼働率が低下している券売機で、少しでも利用者の利便性向上を図れるのなら、という発想。収益が少しでも得られれば券売機の維持コストをまかなうことができるとはいえ、それは二次的な目的」と東急の広報担当者は説明する。

将来的には他の鉄道会社への拡大にも一応言及しているものの、JRにはすでにVIEW ALTTEがあり、導入される可能性はほぼない。となると、対象は私鉄に限られるが、「券売機にQRコードの読み取り機能を搭載している鉄道会社はごく少数。具体的な利用方法を提案し、メリットを感じていただいて、券売機の更新時期に合わせて導入を検討していただきたいと考えている」(同)という。東急の券売機の現金引き出しサービスが券売機活用の決定打となるか。多くの鉄道会社が東急の試みに注目している。

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