日本車が今になって中国で躍進した根本要因 欧米系自動車メーカーの生産台数超えへ

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中国における消費嗜好の変化や消費者ニーズの多様化を踏まえ、ガソリン車市場での「守り」、NEV市場での「攻め」など、バランスに配慮した製品戦略の策定が自動車メーカーに求められている。中国政府は2019年から罰則付きで乗用車メーカーのNEV生産枠を導入し、中国全体のNEVシフトを推進しようとしている。国策の後押しにより中国のNEV販売台数は急速に増加し、2018年に100万台、2025年には700万台に達する見込みだ。

中国NEV市場で熾烈な競争へ

現在欧米系企業は、中高級SUV市場で日系企業を追いかけつつ、NEV市場にも力を入れる。フォールクスワーゲンは2017年に民族系EV大手JAC汽車と合弁でEV工場(年産36万台)を設立、2025年には中国EV販売150万台を目指す。

今年NEV市場の外資出資比率規制が撤廃されることにより、すでに新規EV合弁事業を発表したフォードと衆泰汽車、日産・ルノーと東風汽車、BMWと長城汽車に加え、テスラも中国に年産50万台のEV新工場を建設する。

こうした動きは来るべき中国NEV市場の熾烈な競争を予感させる。今後日系自動車メーカーにとっては、中国政府の政策動向やNEV市場の特性を吟味したうえで、適切なマーケティング戦略を構築し、ターゲットを絞り込み、着実に中国人ファンを増やすことが重要である。

そのためには、NEV製品の投入や電池・モーターなど基幹部品の選定が喫緊の課題である。同時に、明確なコンセプトやシナリオを持って中国自動車市場に臨み、合弁企業の新規設立にかかる現地パートナーの選定や地場NEVメーカーへの出資などに取り組むべきであろう。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員、中央大学兼任教員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国自動車業界のネットワークを活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。大学で日中産業経済の講義も行う。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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