日本車が今になって中国で躍進した根本要因

欧米系自動車メーカーの生産台数超えへ

一方、日系車の日産「シルフィ」とトヨタ「カローラ」は車内空間の快適さと燃費のよさが評価され、欧米系ブランド車一色であった同市場で、それぞれ販売台数2位、3位に躍進した。このSUV、セダン両市場での同時躍進により、日系車の中国乗用車市場シェアは、2018年1~7月に18.1%、7月単月ベースでは20.6%となり、2012年に発生した「尖閣諸島問題」以前の水準に回復した。

「日本車ファン」増やす環境が整う

中国では欧米系メーカーに比べて日系企業の事業基盤は弱い。特に近年は政治的に不安定な日中関係があり、一部の消費者が日本車を敬遠する事態も発生した。マスコミの過剰報道により民族主義が台頭しやすいことが懸念され、日系メーカーは積極的な販売施策を展開しにくい面もあった。

ここ数年中国でSUV需要が増加する中、日系企業のSUV生産能力は不足していた。そしてドイツ系企業に2012年、販売台数で抜かれて以降、日系企業の首位奪還はならなかった。しかし日系車の直近3年間の販売台数は市場平均を上回り、毎年約10%の伸びを見せ、2018年には過去最高の500万台に達する見込みである。日系車販売好調の要因は果たして何であろうか?

1つ目の要因として挙げられるのは、クルマの優劣を客観的に判断する消費者が増えたことだ。

中国では、中間所得層や高所得層の広がりにより、消費対象の「モノ」から「コト」へ変化し、ブーム追随から自分に合ったものを選ぶことを追求するなど、消費に対する意識が変わってきている。クルマ消費も単なる消費財(手に入れたいもの)ではなく、趣味や嗜好に反映されるものに変化している。

中国で日系車は、軽量化ボディで衝突に弱いなどの安全性の問題やパワートレイン技術投入の遅れなどにより、欧米系ブランド車とのイメージギャップに長年苦しめられてきたが、ここに至ってクルマの機能性や省エネ性能が評価されるようになってきた。

また、「安価な外資系ブランド車」を差別化の武器として中国乗用車市場で上位を確保してきた韓国系の北京現代(現代自動車と北京汽車の合弁企業)、欧州車のデザイン性やコンセプトをアピールしてきたフランス系の神龍汽車(PSAと東風汽車の合弁企業)は、中国人消費者の嗜好の変化や中国地場ブランド車の品質向上などを受け、苦戦を余儀なくされている。すなわち、クルマ消費の高度化に伴い、「日本車ファン」を増やす環境が整ってきたといえよう。

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