貸し渋り、貸し剥がしに怯える中小企業--東京大田区、東大阪を襲う受注急減の大ショック

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自動車減産の影響で苦しむ東大阪の製造業
 
 「10月に入って、ピターッと銀行さん、来ませんわ」(自動車関連部品メーカー経営者)。「貸し渋り、貸し剥がしに遭ったところもちらほら出てきた、という話でっせ」(機械メーカー経営者)。
 
 人口約50万人、製造業を中心に中小企業がひしめく「モノづくり」の街・東大阪市。ここにも金融危機の影響が徐々に出始めている。
 
 東大阪商工会議所が会員企業228社を対象に10月9日と10日に行った「円高・金融環境に関する影響調査」では、円高による影響が現在あり、また今後も出てくると65・4%の企業が回答。具体的には「受注先からの値下げ要請」(37・6%)、「輸出関連製品の受注減少」(35・6%)と、先行きの厳しさをすでに覚悟しているようだ。
 
 「これまで自動車産業を軸に景気を引っ張っていたが、米国の景気悪化で、自動車メーカーも減産を始めた影響が、ここにも押し寄せ始めた」と同商工会議所常務理事の平本善憲氏は打ち明ける。
 
 ただ、「米国一辺倒だったら厳しかったが、欧州やアジアに販路を開拓している企業も多いため、今のところショックが軽減されている企業も少なくはない」(平本常務理事)。とはいえ、市内の機械メーカーは「中国から米国への輸出が鈍化しているため、中国向けの(東大阪からの)輸出はやはり減少傾向」(機械メーカー)というのも事実のようだ。
 
 「例年、今頃には新製品の企画書が出てきたが、今年はサッパリ。既存の企画書もダメ」と金型メーカーの社長はぼやく。既存の企画が取りやめになったのかと聞くと、違うという。「宙ぶらりんですわ、塩漬け。前にも後ろにも行きしまへん。50年やってますけど、こんなの初めて」。発注者側の行動が読めなくなってきたと嘆く。
 
 さらにダイカストの鋳物メーカーは「見積もりを出せば次は価格交渉となるが、最近は見積もりを出してもなしのつぶて。こちらの見積もりが高ければ、黙って安いところに回しているようだ」。同じ業界内のことだけに、「どこの注文がどのメーカーに行った」とのうわさは耳に入る。それによると、最近は東北地方のメーカーに回っているものが多いようだという。「受注した企業もおそらく赤字覚悟でやっている。大丈夫だろうか」と、いらぬ心配さえしてしまうという。
 
 ある自動車部品メーカーは「取引先からの値下げ圧力が強まってきた」と漏らす。そのうえ、今年上期の高値を続けた時期に仕入れた原材料がまだ残っており、原価引き下げもままならない。おのずと、価格交渉は厳しくなると打ち明ける。
 
 東大阪商工会議所が8月に調査した「景気動向調査」は、現状を先取りしていた。製造業の生産額業況指数、卸売業の販売額業況指数ともに前年同期比で40ポイントの下落。小売業に至っては、販売額業況指数は同56ポイント減と大幅に下降している。平本常務理事は「受注は昨年の2割減という希望的観測もあるが、1~2カ月後にどうなっているか……」とさらなる悪化を懸念する。
 
 こうなると、気になるのが「カネ回り」。現状がこうであれば、今後、各企業の財務状況が悪化するのは避けられない。先の東大阪商工会議所の調査によれば、すでに19社が「貸し渋りあり」、3社が「貸し剥がし」ありと回答するなど、金融環境悪化の兆しが見えている。
 
 これから年末に向けて当座の運転資金や従業員のボーナス、年明けの設備投資など資金需要が切迫している企業も多い。しかし「銀行はんから、“勘弁してくれ”と言われました」という声も聞く。「リーマンショックで金融機関がいかれてしもたから、うちら中小にまで貸す余裕なんてないんやろな」(鋳物メーカー)と苦笑する。
 
 貸し渋りの背景にはさまざまな要因がある。その最も強烈な原因と指摘されているのが、昨年秋からの信用保証協会の保証付き融資制度の変更。協会100%保証から80%保証(金融機関が20%相当の貸し倒れリスクを負担)へ変更されたため、金融機関の貸し出し先を見る目は一気に厳しくなった。10月31日からの緊急経済対策により、条件次第で100%保証を復活させるが、その効果は未知数だ。
 
 だからこそ「こんな不景気、カネを借りてもやることあらへん。新規に貸さんでもいいから、その分返済に融通を利かせてほしいですな」という声も経営者から聞こえてくる。
 
 「公的資金の注入もよし、それで銀行側は経営を支える分、貸し手には当分利子のみとか、返済を軽減してほしいと願う企業が多い」と平本常務理事は代弁する。無理な返済を強いて企業を倒産させるより企業が生き残るようにすれば、地域の雇用も消費も確保され景気全体の負のスパイラルから逃れられるというわけだ。だが、それはあくまで希望的観測だ。「いったいどこまでわれわれのことを考えてくれますやろか」。そんなあきらめにも似た声が、多くの経営者から聞こえてくる。

(週刊東洋経済)

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