「介護付き老人ホーム」は本当に高すぎるのか 「おひとりさま」なら今から考えておきたい

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適用される介護保険には上限があります。たとえばいちばん重い「要介護5」の場合、月額で約37万円使えます。地域によっても少し金額が異なります。その方の年金などの収入にもよりますが、もし1割負担したとすると、3万7000円ほどの自己負担です。

しかし、サ高住で介護ケア付き老人ホームと同程度のサービスを受けるには、月額50万円から60万円ほどの自己負担になるのが一般的です。介護保険から支払われる費用に比べて高額です。

このように比べてみると、すべて含まれている施設を選ぶほうが、結局は「おひとりさま」には安心かもしれません。住宅型施設の料金は安いですが介護費用は介護状態になってから別途必要になるため、将来的にいくらかかるかわかりません。介護度が高くなり長引いた場合、高額になることも十分に考えられます。

特定施設入居者生活介護の国の基準により、介護サービスは3人に対して1人のスタッフが担当します。先ほどご紹介した介護ケア付き施設では、居住者2.5人に1人、介護状態になってからは1.5人に対して1人のスタッフが面倒を見る手厚い体制がとられています。多くの方は、介護状態になってから入所する、介護ケア付き老人ホームを思い浮かべる方もいると思います。そういうところは部屋の広さが15㎡ほどと小さく、お風呂もキッチンもないことも少なくありません。

「値段も高いが、満足度も高い施設」の選択も

施設にもよりますが、元気なときに入る介護ケア付き老人ホームを選択すると、一般的にスペースは広く、マンションのように自立して生活できるようになっています。ホテルのような快適な空間で、晩年をゆったりと好きなことを楽しみながら過ごすことができる施設も少なくありません。1カ月の食費は毎食頼んでも追加費用は月額5万円ほどのところもあり、特に男性の一人暮らしの方が本当に喜んでいるそうです。一人だとつい食事も簡単になりがちです。バランスのよい食事をとり続けられるのは健康維持にもつながります。晩年を不安なく楽しむことができるなら、高額でも頑張って準備する価値はあるのではないでしょうか。

読者の皆さんは、自分の体が動かなくなったり、判断能力がなくなったとき、サポートしてくれる人はいますか。介護ケア付き老人ホームは、元気なときには自由で快適な暮らしができ、だんだん自分の体力や判断力が低下してきたときは、手助けしてくれるシステムになっています。自分の尊厳を保ちながら、老後を自由に楽しむことができます。そのうえ、一人で暮らすより防犯上安心ですし、いざというときに困ることもありません。その代わり金額が高額です。見てきたとおり、入居一時金も含めると、一時金は安くても3000万円から5000万円くらい。それにプラスして月々20万円前後はかかります。金銭的に恵まれていた百合子さんのような例を実現するのは、そう簡単ではありません。

「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータでみると、厚生年金の平均支給額は、男性16万6120円、女性では10万2131円です。ねんきん定期便などで将来の年金をシミュレーションして、見込み金額を試算してみてください。入居金+生活費が準備できれば、老後も安心です。一人なら50代前でも準備していけます。もちろんどんな道を選ぶかは自由ですし、介護ケア付き老人ホーム以外の選択もあります。ぜひ、読者の皆さん一人ひとりが未来をイメージしつつ、さまざまな準備を始めていただきたいものです。

木田 美智子 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

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きだ みちこ / Michiko Kida

郵便局で37年間勤務、退職後、独立。多くのお客様との出会いと経験を生かし「気軽に相談できるファイナンシャルプランナー」として活躍中。「確定拠出年金相談ねっと」認定のFP、DCアドバイザー、金融知力インストラクターや、各種FP団体役員としても活躍。大学の資格取得講座講師や横浜市内の小学校で「上手なお金の使い方」の講師など金融教育にも力を入れる。郵便局社員向けやFP向けなどの各種セミナー活動も熱心に行っている。

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