「介護付き老人ホーム」は本当に高すぎるのか 「おひとりさま」なら今から考えておきたい

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介護ケア付き老人ホームの一般的な費用について、ここでは神奈川県の港南台駅から徒歩圏のところにある施設を例にあげます。入居金(終身利用権)は2500万〜4200万円と幅があり、そのほかに安心サポート費が500万〜900万円必要です。入居一時金は、場所や入居時の年齢で大きく変化します。年齢の目安として、75歳の人で3700万円ほどかかり、毎月の管理費は11万円ほどです。それに光熱費と利用した分の食費が加算されます。毎月の生活費は、どこにいてもかかるものです。いざというときの介護費用も先払いになります。

入居金が用意できれば、あとは不安なく自由な時間を追求できます。老人ホームというと、「あとは死を迎えるだけ」と暗く考えられがちですが、こうした施設は実は難しい介護状態にならないための工夫がたくさん施されているのもメリットです。このように、介護ケア付き老人ホームも視野に入れながら、多様な生き方と資金計画を立てることも可能となります。

「おひとりさまの老後」を具体的にイメージしていただくために、市原百合子さん(76歳、仮名)の例をご紹介しましょう。

百合子さんは、まだまだ元気で活動的ですが、「万一健康を害したときのため」と、あらかじめ行動に移した一人です。夫は8年前に他界し、一人で暮らしています。一人息子は別に家を持って暮らしています。夫の遺産分割の際に、相続財産の半分をきっちり息子に分けているので、息子には自分の財産を残さなくてもいいと考えていました。ですから、経済的な不安はありません。

要介護になったときだけ面倒を見てもらう

百合子さんは若い頃は普通の会社員として働いていたこともあり、友達も多く、今も海外旅行、国内旅行にもたびたび出かけています。歌、フラワーアレンジメントやフラダンスなど趣味も幅広く、活動的です。あるとき、介護ケア付き老人ホームに入所している友人から、とてもいいと聞いてから、「自分もそんなところで暮らしたい」と思うようになったのです。その友人が入ったホームの入居金は5000万円から1億円ほど。そこで「もし万が一介護状態になったらお世話をしてもらえるところはないか」と探しはじめ、セミナーにもいろいろ参加していたそうです。

友人のように元気な人が暮らすマンションタイプで習い事も続けたいので、駅に近いところで探しました。しかし駅近物件はなかなか高額で、しかもすでに定員いっぱいのところも多く、なかなか見つかりませんでした。たとえば見学に行ったある施設は「お手頃価格」でしたが、自分が元気なうちも介護状態の人と一緒に暮らすスタイルだったので、しっくりきませんでした。「とにかく駅近で習い事を続けたい」。ここは譲れない部分でした。そのため時間がかかっても極力希望にあったところを探すことにしたのです。

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