モーツァルト「後宮からの誘拐」の斬新な響き

雇用主から解雇され、自由な発想で作曲

映画「アマデウス」にもモーツァルトがドイツ語オペラの創設について皇帝に語るシーン、「後宮からの誘拐」のリハーサルシーンが出てくる(写真:Everett Collection/アフロ)

読者の皆様、多忙な毎日を過ごされていると思います。爽快な事も不愉快な事もあるでしょう。時には、上司との見解の相違、対立もあるでしょう。場合によっては、激しい口論、けんかも。

そこで、 今週末に聴いていただきたい名盤は、モーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」(Die Entführung aus dem Serail)です。

なぜこの音盤かと言えば、ザルツブルクの宮廷楽団員だったモーツァルトは雇用主であったコロレド大司教(Hieronymus von Colloredo)との間で激しい口論となり解雇されたのですが、その結果生まれた作品だからです。その時、モーツァルトは25歳。定職のないフリーランスの立場におかれます。そこで、起死回生、作曲したのが「後宮からの誘拐」です。

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ここには、社会的な地位には恵まれてないけれど新しい音楽への創造力に満ちた若きモーツァルトがいます。魅惑の旋律と斬新な響きに満ちています。しかも、イタリア語こそがオペラの言語と相場が決まっていた時代にドイツ語でつくられたオペラという意味でも画期的でした。脚注的にいえば、欧米のロックにあこがれて学んだJポップ創世期の世代(はっぴいえんど、カルメン・マキ&OZ、サザン・オールスターズなど)が日本語によるロックに情熱を燃やした状況に似ています。

あと一つ、映画「アマデウス」で皇帝ヨーゼフ2世が、リハーサルをしているモーツァルトに対して「この曲はちょっと音数が多すぎないか」と指摘したのに対して、モーツァルトが「皇帝、ちょうど必要なだけの音符があるのです」と説明する場面がありました。これがまさに「後宮からの誘拐」のリハーサルでした。

野心家の若きモーツァルトと雇用主との対立

さて、古今東西ビジネスパーソンは日々闘っています。敵は外だけではなく、社内にもいます。十人十色とはよく言ったもので、仕事上の事で意見が分かれるのも日常茶飯事です。時に上司との対立もあるでしょう。決定権があるのは上司です。立場が上になれば視野も広くなり、全体の中で妥当なリスク判断ができるのが上司、のはずです。

しかし、現実に納得できない時もあるでしょう。建前としては会社のためだといいつつ、実はおのれのエゴの為や利益誘導の場合もあるかもしれません。あるいは、あなたの立場を不当に害するような差配もあるかもしれません。ところが、上司には人事権があります。組織の中で生きていくのなら、自分の主張は飲み込んで上司の決定に従う、これも一つの現実的な処世術です。いつかあなたがチカラを得た時に思う存分にやれるまでは臥薪嘗胆するのも大人の対処です。

一方、どうにも我慢ならず、これまで堪えてきていた不満が一気に噴き出して上司と抜き差しならぬ関係になることもあるでしょう。

実は、25歳のモーツァルトは、正にそんな状況に置かれていたのです。

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