コスモHDは業界再編の恩恵を活かせるか ガソリン「安値販売」終焉で業績は好発進

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さらに原油高もコスモHDの石油開発事業の追い風となった。同社は産油国・アラブ首長国連邦アブダビ首長国との関係が深く、同国における海上油田開発に実績がある。

今年1月からアブダビのヘイル油田がフル生産を開始。コスモHDグループの原油生産数量は日量約5万2000バレル(前年同期比135.2%増)と大幅に増加。第1四半期では経常利益ベースで123億円(前年同期は54億円)を稼ぐなど、収益を押し上げた格好だ。

高水準な原油価格はそのままコスモHDの実入りにつながる。イランをめぐり国際情勢が緊迫する中、原油価格が高止まりするという見方も多い。同社にとっては好材料といえそうだ。

第3極は生き残れるのか

とはいえ、JXTG、出光昭和シェルに規模で劣る中で、コスモHDは中長期的に第3極としてどのように生き残っていくのか。その一端を示したのが今年3月中旬に公表した5カ年の中期経営計画だ。

本業である石油事業の収益力強化と風力発電をはじめとした新たな収益の柱の育成を掲げている。石油精製事業では千葉製油所と他社製油所をつなぐパイプラインを活用するなどし、重油などに比べて収益性の高いガソリンや軽油などの生産割合を増やす。製油所が停止する定修期間の短縮に取り組むことで稼働率を向上。物流合理化などコスト削減策も徹底する。

石油開発事業では操業コストを削減しつつ新規投資案件を検討。また新規事業としても、風力発電事業を手掛ける子会社のノウハウを活かし、洋上風力事業への参入に意欲を見せる。全国で160を超える風力発電機を運用するコスモ子会社は適地選定や環境アセスメント、保守メンテナンスといったノウハウを蓄積している。太陽光に比べて、風力発電は参入障壁も高い。

こうした中計でコスモHDがあらわにした危機感は元売り各社に共通のものだ。国内需要が徐々に減少するため、これまでと同じことをやり続けるだけでは先細るしかない。

経済産業省の試算によれば、国内のガソリン需要は2022年度には2017年度比で1割減る見通しだ。コスモのガソリンスタンド数も2016年度から3000カ所の大台を切って減少を続けている。

出足の業績は好調だったとはいえ、国内の需要減少は徐々にコスモHDの経営体力を奪っていく。その間、中計で掲げた施策を完遂できるのか。コスモが次の「成長の柱」を具体化するにはまだ時間がかかりそうだ。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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