揺れる東京医大、「不正入試」の驚くべき実態 この2年で少なくとも19人に不正加点
報告書を受けて会見を開いた東京医大の行岡哲男常務理事や宮澤啓介学長職務代理は、「一律に(0.8を)掛けるとか、そういうことにわれわれは関与していない。承知しておらない。女子や多浪生を差別していることも知らなかった。報告書で知って驚愕した。東京医大は女子学生が多いことで有名な大学なのに」と驚くとともに関与を全否定。あくまでも臼井前理事長や鈴木衛前学長のしたことであるという立場を崩さなかった。
本当に何も知らなかったのだろうか。報告書には、看護学科学務課課長の証言として「2017年の入試委員会で『属性による得点調整に関する資料』を提出しているので当時の入試委員会のメンバーは皆、この調整について知っているはずである」と記載してある。
入試委員だった宮澤学長代理は、「私は見たことがない。委員会で配られたとしても、綴じてある中の1枚ですぐ回収されたのではないか。そうでなければその場で十分議論されていたはずだ。今後組織される第三者委員会で調査をきちっとしていただいて、身の潔白を証明していただきたい」と気色ばんだ。
事件発覚後、S君は大学に来ていないが、夏期休暇前の試験を受けないと自動的に留年になるために、他の学生とは別の部屋で、1人で試験を受けたという。調査報告書はS君に対して「自主退学を勧めるという選択肢もありうる」と指摘したが、宮澤学長代理は「大学の不正で入学し、大学が入学許可証を発行した以上、責任は大学にある。自主退学を勧めるつもりはない」と断言した。ただし、贈収賄事件なので、贈収賄物は返還しなくてはならない。本件ではS君の合格が贈収賄物に当たるが、「それは大学の判断することではない」(宮澤学長代理)。
合否を判断する資料は押収されたまま
報われないのは、本来は正規合格や補欠合格となるところを、あおりを受けて不合格となった女子や多浪生である。
大学側は「過去の女子受験生や多浪生について誠心誠意対応する。今年度中をメドに精査し追加合格としたい」と言う。一方で調査委員会は、合否を判定する資料が東京地検に押収されたままで、公判中の1~2年は戻ってこない可能性があるとする。宮澤学長代理は、「押収物の一部返還を求める一方で、学内に合否の判断できる資料が残っていないか探す」と言うが、現実的には厳しい状況と言わざるを得ない。
今回の内部調査を受任したのは、東京医大の顧問弁護士である鈴木翼氏が所属する田辺総合法律事務所だった。鈴木弁護士が調査委員会に加わらない、調査報告書に加筆しないことを大学側が約束する、逆に田辺総合が公正中立に調査することを大学側に約束するなどの条件を付けることで、「第三者委員会的な委員会になったので、第三者委員会の設置は不要だろう」と調査委員会の中井憲治弁護士(元最高検検事)は胸を張った。
だが、東京医大は調査書を文科省に届け出た直後に、第三者委員会の設置を決定した。今後の真相解明は、東京地裁と第三者委員会に委ねられることになる。
東京医大の調査結果を受けて、林芳正文科大臣は全国の国公私立大の医学部の入試で不正がないか緊急調査する考えを示した。第2、第3の東京医大が現われれば、医大入試への不信はさらに高まることになる。
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