若者は「今上陛下の平和への思い」を忖度せよ ご高齢をおして「慰霊の旅」を続けた理由
最も親しくしていた同期の戦友の最期を尾崎さんはこう記している。
「偶然、出会った戦友たちと4人で行動をともにしました。最も仲のよかった同期の戦友もそこにいました。しかし、戦友は出会ったときすでに疲労困憊していて衰弱が激しく、何日もしないうちに立ち上がる体力もなくなってしまいました。
私は彼の近くにいて、残りの2人は離れた場所で食べられる物を捜していました。
私は、山中に逃れるとき、最後の最後のためにわずかな米を靴下に詰めて、ずっと隠し持っていました。これまで死ぬほどの目に遭っても、その米だけには手をつけずに持っていました。このとき、その米を出して衰弱し切った戦友と分けて食べました。食べ終わると、それじゃあ行くよと言って私は立ち上がりました」
戦友はそのままそこに残った。山中で歩けないということは死を意味する。
平和の願いを受け継ぐのは若い世代
今上陛下は2015年に新年を迎えたとき、次のようなお言葉を述べておられる。文字数の関係上、前段を省略しているが全文は宮内庁のホームページで確認できる。
「(前半部略)本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています。
この1年が、我が国の人々、そして世界の人々にとり、幸せな年となることを心より祈ります」
私が昨年『戦争の大問題』を出版したのも、いまの若い人たちに日本の現代史を学んでほしいという一念からだ。
いま日本は、再び日本を戦争に近づけようとしている。日本人は老若男女とも、もう一度、73年前に終わった日本の戦争について学び直すべきである。なぜ73年も前のことを学ばなければならないのか。そう考える人は8月15日の全国戦没者追悼式に立つ今上陛下の背中が語りかけてくる思いを、真っすぐに受け止めるべきだ。
それが今年の8月15日の全国戦没者追悼式を迎えて私の言いたいことである。
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