こうして小規模マンションでも再生できた アトラス渋谷公園通りに見る、建て替え成功のヒント

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前出の大木主任研究員は「宇田川町住宅は住民同士のコミュニティがしっかり機能していた。商業床の所有者である供給公社も建て替えには好意的だったので、大きな混乱はなかった」と振り返る。それでも、建て替え決議を前に10カ月を費やし、説明会を4度、個別面談会を3度実施するなど、合意形成に向けて万全の体制を整えた。

マンション建て替えに近道はない

建て替えを検討するマンションが置かれている条件は物件ごとに千差万別。「これをすれば建て替えできるという方程式はない」(大木主任研究員)。

確かに、宇田川町住宅は容積率に余裕があったり、店舗の大家が供給公社だったりと、恵まれた点が多かった。にもかかわらず、アトラス渋谷公園通りとして生まれ変わるのに最初の検討から実に10年の歳月を要した。

建て替えまでに時間がかかればかかるほど、住民間の感情のもつれは生じやすくなる。一部の住民だけが建て替えに前のめりになれば、それを快く思わない住民も出てくる。そうなる前に、早い段階からコンサルタントやデベロッパーなど外部の声に耳を傾け、手間を惜しまず議論を重ねて住民全体の意識を醸成する必要があるのではないか。

マンション建て替えには「急がば回れ」の意識で臨む――。それが宇田川町住宅の事例から見えた成功要件だ。

猪澤 顕明 会社四季報オンライン 編集長

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、テレビ局勤務を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。

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