ZARAの物流戦略はいったい何がスゴいのか 日本企業はその重要性を理解できていない

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そのためには、どんな物流戦略で経営戦略を実現していくかを考える役割(戦略レベル)、その戦略を実現するための実行計画を立て実行する役割(戦術レベル)、計画に基づいた日々のオペレーションを着実に実行する役割(戦闘レベル)の3つの層に分けて考える必要があります。

1つの事例として、ファストファッションの最大手、ZARA(インディテックス社のファッションブランド)を見てみましょう。ZARAでは、鮮度の高い商品を提供することが経営戦略になっています。同社では、これを実現するために、物流センターをスペインに配置、スペインおよび近郊国で生産してスペインに納品し、そこから航空便を使って全世界の店舗に納品するという物流ネットワークを組み上げています。

ロジスティクスはビジネスモデルそのもの

これこそが物流戦略です。「インディテックスの経営戦略は物流戦略である」と言っても過言ではないくらい物流がかかわっています。

戦術レベルでは、ロジスティクスセンターを開発し、ストックポイントである店舗の開発や再配置を行い、生産拠点を開拓し、航空便の確保や、ロジスティクス関連ソフトウエアのリニューアルを行っています。

戦闘レベルでは、週2回の店舗納品のための出荷が間に合うように、商品検品や梱包などを作業スケジュールどおりに行っています。

一方、経営戦略の1つに挙げられているインターネット販売の拡大のためには、違う物流戦略が組まれています。スペインの物流センターから日本に送る際には、48時間もの時間がかかります。またスペインの物流センターは、B2Bのオペレーションですから、B2Cのオペレーションを入れると現場の生産性が格段に落ちます。

そこで、インターネット販売のB2Cは、違うオペレーションにしました。世界に20カ所のローカルな物流センターを持ち、そこからお届けするという物流ネットワークの設計です。このネットワークの設計は、現場部門では無理ですから、企画部門がやります。戦略レベルの人が、このネットワーク構造を設計するのです。

そして今、店舗在庫とネット通販用在庫を一元管理するよう、進化しています。

『アマゾン、ニトリ、ZARA…… すごい物流戦略 』(PHP新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

日本企業トップの多くが信奉者になっているピーター・ドラッカーは、1962年、「ロジスティクスは、最後の暗黒大陸だ」と語り、それを見聞きした経営者はハッとしました。当時、アメリカでも、ロジスティクスコスト算出の重要性が意識されず、そのコストの妥当性がわからなかったのです。

それから半世紀以上経ち、「物流を制する者が市場を制す」という言葉も語られるくらいに、アメリカでは、その重要性がよく理解されていますし、見える化もされています。

しかし、日本では残念ながら、この重要性が理解されていないどころか、「暗黒大陸のままで、手をつけられない」と嘆く経営者も多くいます。

この続きとして第2回でアマゾン、第3回でニトリの事例をご紹介します。

角井 亮一 イー・ロジット取締役会長兼チーフコンサルタント

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かくい りょういち / Ryoichi Kakui

1968年生まれ。上智大学経済学部経済学科を、3年で単位取得終了し、渡米。ゴールデンゲート大学マーケティング専攻でMBA取得。帰国後、船井総合研究所に入社。2000年に通販専門物流代行会社である当社を設立、代表取締役就任。著書に「物流革命2020」(日本経済新聞社)「日経文庫 物流がわかる<第2版>」「すごい物流戦略」(PHP新書)など

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