なぜ今?「ゆりかもめ」が駅名を変える不思議 いっそ「副駅名」のほうが有利な場合もある

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駅名の変更は駅名標だけでは済まない。各駅や車両に掲げる路線図のほか、駅や車両の自動放送、到着案内など、旅客営業と運行管理のシステム変更も伴う。1駅ずつ改名していたら費用が嵩む。しかし、1つやるとなれば、懸案の駅の変更も合わせてしまえばコストは割安になる。今回の2つの駅名変更の費用は約3億5000万円とのことだ。

国際展示場駅(写真:YNS/PIXTA)

ところで、東京ビッグサイトの最寄り駅はもう1つある。東京臨海高速鉄道りんかい線の「国際展示場」駅である。

同線の運行を行う東京臨海高速鉄道に聞くと、駅名の変更予定はないとのこと。「東京ビッグサイトのほうがわかりやすいという声は承知しているが、駅名を変更する費用が膨大で、施策の優先順位は低い」という。ちなみに東京臨海高速鉄道も東京臨海ホールディングスと同様に東京都の管理団体であり、東京都が90%以上の株式を保有している。

ゆりかもめとりんかい線の駅名変更に温度差が現れる理由は、東京臨海ホールディングスの管轄が東京都港湾局と産業労働局の所管、東京臨海高速鉄道は東京都都市整備局の所管だと聞けば腑に落ちる。同じ東京都といっても、所管部署が違うのだ。

もっとも、足並みをそろえて両方の駅ともに「東京ビッグサイト」を使われると紛らわしいことも事実。せっかく片方が東京ビッグサイトとなり、待ち合わせの時に駅名の混同が解消されるから、筆者としてはりんかい線まで改名する必要はなく、むしろそのままでいてもらいたい。

なお、ネットでは「青海駅の改名要望もある」と株式会社ゆりかもめに伝えたところ、「そもそも駅周辺の地名が青海であることから名づけた駅であり、他の駅と文字が似ているという理由だけでは変更しない」とのことだった。とはいえ、「ビーナスフォート前」駅とでもしたほうが利用者に親切かもしれないと個人的には思う。

「副駅名」とは

駅名を変更する代わりに「副駅名」を付けるという方法がある。今年3月、東京メトロは千代田線の二重橋前駅に「丸の内」を併記し、千代田区丸の内地区に近いとアピールした。路線名の丸ノ内線は「ノ」とカタカナで表記するし、もともと付近に丸ノ内駅はないので乗り間違いもないようだ。

駅名変更と副駅名の使い分けが巧みな例は「とうきょうスカイツリー」駅と「押上」駅だ。東武鉄道は2012年に東京スカイツリータウンの最寄り駅の「業平橋」駅をとうきょうスカイツリー駅に改称した。伊勢崎線にも「東武スカイツリーライン」という愛称を与えた。これに対して、別の最寄り駅となっていた押上駅は、副駅名として「スカイツリー前」を掲げた。押上駅は都営地下鉄、京成電鉄、東京メトロ、東武鉄道が乗り入れている。副駅名とすれば、各社の案内表示やシステムを広範囲に変更せずに済む。とうきょうスカイツリー駅と押上駅は、どちらもスカイツリータウンの最寄り駅をアピールし、混同される事無く共存できた。

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