1回5万円「退職代行」が人気化する背景事情 「犯罪者のように」上司から引き留められる?

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依頼者とのやり取りはメールやLINEがメイン。全国各地から依頼が殺到しているが、中でも大阪、兵庫、和歌山、三重の関西圏からの依頼が多くきている。意外にも地方からの依頼が目立つが、「地元の先輩の会社で働いていたり、家族ぐるみの付き合いがあったりと辞めづらいのでは」と新野さんは分析する。

代表の新野さん(右)と岡﨑さん。ともに平成元年生まれ。(写真:EXIT提供提供)

EXITにはネクストサポート制度もあり、2回目以降の依頼は割引価格で代行する。実際に2回以上利用するケースもあり、ある男性(35歳)から就業1日目で退職代行の依頼があり、無事成立。その後、2カ月ほどして今度は就業4日目で依頼があった。

就業期間が短ければ短いほどバックレる人も多そうな気もするが、そこに依頼者の真面目な性格が表れているという。

「辞められない理由の一つに退職者が感じている”申し訳ない気持ち”があります。入社したばかりなのに、あるいは、育ててもらったのに、などという思いから言い出せないケースです」(新野さん)

短期間での2回の利用についても「いつでも辞められるという安心感が後ろ盾になっているのではないか」と分析している。

「そのくらい自分で言えないのか」の声も

需要は高まる一方で、「そのくらい自分で言えないのか」という批判の声もある。実際、代行の電話をかけた際にも「どうして本人が直接来ないのか」と言われたこともあったという。しかし、「退職の相談すらできない環境になってしまっているのは、上司の部下への接し方に問題があるのではないか」と新野さんは指摘する。

過去にサービスを利用した人の中には人事部に所属していた男性(20代)もいた。給与計算がメイン業務だったというが、身近に人事権を握る人がいて言い出すことができない実情を物語る。

「世の中にはごまんと会社があります。自分と合わない数社に悩む必要はありません。もっと気軽に退職を伝えられる社会になってほしい」と新野さんと岡崎さんは口をそろえる。インターネットで話題になり、依頼も急増。急きょ採用も実施した。もちろん「即日退職OK」だ。

(文:AERA dot. 編集部・福井しほ)

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