箱根「カレーパン・足湯」セットが人気のワケ

「スシキング」が仕掛ける非日常リゾート

その石井氏が日本国内のリゾートビジネスを手掛けた第1号が赤倉観光ホテルの再建だった。赤倉観光ホテルは、後にホテルオークラを創設する大倉財閥の総帥、大倉喜七郎により、日本政府が外貨獲得政策として推進した国際リゾートホテル建設の1つとして1937年に創業した。日本の高原リゾートの草分けとして皇室をはじめ国内外の貴人、要人をもてなした歴史があるが、バブル期の過剰投資などで経営が行き詰まり、運営会社である旧大倉財閥系企業が事業の譲渡先を探していた。

そのとき、たまたま当時の総支配人と石井氏に共通の知人がおり、その知人経由で事業譲渡の打診を受けた石井氏は何度か赤倉に足を運ぶうちに、同ホテルを「日本の財産といえるものだ。このまま朽ちさせてはならない」と思うに至ったという。

こうして事業譲渡を受け、ホテル名、歴史・伝統のみならず、旧赤倉観光ホテルの従業員をほぼ引き継ぐ形で、新生赤倉観光ホテルがスタートしたのが2004年6月のことだった。

ベーカリー&テーブル箱根店内。東府やと箱根のベーカリーで共通する商品は2~3割程度。各店舗オリジナルの商品が多い(筆者撮影)

この赤倉観光ホテルの特色の1つに、「日本のホテルパンの源流」ともいえるパンづくりの伝統がある。創業者である大倉喜七郎が帝国ホテルの経営権を持っていたことから帝国ホテルとの人的交流が深く、赤倉観光ホテル創業当初、製菓・製パン課には、ロマノフ王朝宮廷職人の末裔(まつえい)で、帝国ホテルに日本初のホテル内ベーカリーをつくったイワン・サゴヤン氏に師事した岸本光雄氏もいた。

その後も、「赤倉観光ホテルは常連のお客様が多く、パンのみならず食事全般に関して、いつものメニューを食べたいというご要望があります。そのため、長い歴史の中で人が変わっても、レシピはきちんと残されている」(R&Mリゾート企画・宿泊営業部門部長の桜井大樹氏)ことから、伝統を受け継いだパンづくりが今も行われているという。

伊豆での成功

赤倉観光ホテルは2008年12月に本館を全面リニューアルし、2009年には季節によって雲海も眺められる露天風呂を備えたSPA&SUITE棟を増築。事業譲渡直後の2005年には約3億1300万円だった年間売り上げが、2010年には約6億8000万円となり、さらに2016年のプレミアム棟増築後、2017年には約16億7300万円まで伸びている。

赤倉観光ホテルの事業が軌道に乗ってきた時期である2009年に石井氏のもとに舞い込んできたのが、伊豆吉奈温泉の老舗旅館「東府屋」の買収案件だった。吉奈温泉は今でこそ知名度が低いが、奈良時代からの歴史がある「子宝の湯」として知られ、徳川家康の側室であるお万の方が温泉に浸かり、後にそれぞれ紀州徳川家の祖、水戸徳川家の祖となる2児を授かったという話も伝わる名湯なのだ。

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