自然災害対策と「財政問題」は、分けて考えろ 「赤字だから対策できない」には根拠がない

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しかし、すでに明らかにしたとおり、日本政府が債務不履行に至ることなど、あり得ない。また、デフレである間は、財政赤字の拡大は長期金利の急騰をもたらさない(参考)。

実際、デフレ下にあった過去20年、政府債務残高は増え続けたが、長期金利は世界最低水準で推移し、2016年にはマイナスすら記録した。ある推計によれば、2000年から2007年における財政赤字の1兆円の増加は、長期金利を0.15bsp~0.25bsp(1bspは0.01%)引き上げただけだった(参考)。つまり財政赤字を100兆円増加したとしても、長期金利の上昇は0.3%にもならないのだ。

したがって、「現在国費ベースで年6兆円の公共事業費を拡大すること」はできるし、すべきである。むしろ、デフレの今こそ、金利急騰の副作用をもたらさずに公共投資を拡大できるチャンスとも言えるのだ。

政府債務の対GDP比率と財政破綻とは関係がない

それにもかかわらず、吉川氏は、長期デフレ下の日本にあって、歳出抑制の必要性を強く主張し続けてきた。

たとえば、2003年、吉川氏は、伊藤隆敏氏ほか日本を代表する経済学者らと共同で、政府部門の債務の対国内総生産(GDP)比率が140%に達していることを踏まえ、「財政はすでに危機的状況にあり、できるだけ早い機会に財政の健全化(中略)が必要である。」と警鐘を鳴らした(2003年3月19日付日本経済新聞「経済教室」)。

吉川氏らによれば、このままだと政府債務の対GDP比率が200%に達するが、「この水準は国家財政の事実上の破たんを意味すると言ってよい。たとえデフレが収束し経済成長が回復しても、その結果金利が上昇するとただちに政府の利払い負担が国税収入を上回る可能性が高いからである。」

しかし、現在の政府債務の対GDP比率は、吉川氏らが「国家財政の事実上の破たん」とした水準をすでに上回り、230%以上となっているが、長期金利はわずか0.03%に過ぎない。政府債務の対GDP比率と財政破綻とは関係がないのだ。

吉川氏らの「デフレが収束し経済成長が回復すると、ただちに政府の利払い負担が国税収入を上回る可能性が高い」という主張も、理解し難い。

第一に、経済成長が金利を上昇させる可能性はあるが、それは同時に税収の増加をももたらし、財政収支を改善するのである。

実際、2018年度当初予算は、企業業績の改善を背景に、中央政府の政策経費(地方交付税交付金等を除く)を上回る税収が見込まれている。もっと端的な例を挙げると、1990年当時、長期金利は6%を超えていたが、誰も財政破綻など懸念していなかった。それどころか、一般政府の財政収支は黒字だった。言うまでもなくバブル景気が税収の増加をもたらしていたからだ(したがって、財政黒字は、マクロ経済的には必ずしも健全とは言えないのだが)。

いずれにせよ、経済成長は財政を健全化しこそすれ、それがただちに財政危機を招くなどというのは考え難い。

第二に、そもそも、政府債務の返済は、国税収入だけで行うものではない。継続的な借換(新規国債の発行によって同額の国債償還を行うこと)によることもできる。政府債務というものは、原則として完済をする必要がない債務なのだ。それゆえ、ほとんどの先進国において、国家予算に計上する国債費は利払い費のみで、償還費を含めていない(参考)。

その利払い費は、2018年度予算では約9兆円が計上されている。これは長期金利を1.1%として算定されたものだが、市場金利は0.03%程度だから、実際の利払い費は9兆円よりもずっと小さい(参考)。

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