欧州の鉄道「スピード最優先」の時代に終止符 イタリアは時速350km運転を無期限延期

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ドイツのICE(手前)、フランスのTGV(奥)ともに欧州の高速鉄道を牽引してきたが、さらなる高速化には消極的だ(筆者撮影)

たとえば、フランスの高速新線LGVは、最初に開業した南東線とその次の大西洋線(最初に開業した区間)では複線間隔が4.2mであったが、北線では4.5mに、地中海線以降は4.8mと、後発になるほど間隔が広がっており、複線間隔が広い東ヨーロッパ線では、欧州最速となる時速320km運転が行われている。

ただし、既存路線の高速化については、複線間隔の拡大や線形改良など多岐にわたることから、特に金銭的な面で非現実と言わなければならない。

高速化一辺倒から方向転換

一方ドイツは、もともと各地方に都市が点在しており、高速化に対する必要性がさほど高くないことから、時速300km以上での運転を行う積極的な理由が見つからない。

ケルン―フランクフルト間は、ドイツ国内の数少ない最高時速300km運転区間だ(筆者撮影)

現在、同国内で運行される高速列車の多くは最高速度250kmまでの中速列車となっており、ベルリン―ヴォルフスブルク間のように300km運転ができる区間においても、運行は250kmまでとなっている。300km運転が行われているのは、ケルン―フランクフルト間やニュルンベルク―ハレ間など、一部区間のみだ。将来的に、300km以上の速度で運行する可能性はほとんどないと言える。

スペインも、かつて時速350km運転を行うと表明していたが、最近ではまったく聞かれなくなった。スペインの高速鉄道網も建設は一段落し、現在ではフランスとも結ばれたため、今後は在来線との直通運転など、利便性の向上などに注力していくものと思われる。

LCCや高速バスなど、さまざまな交通機関が群雄割拠する欧州。鉄道は、他交通機関とのすみ分けを明確にするなど、高速化一辺倒ではない「鉄道ならではのサービス」を提供できる方向へ転換する時期に来ている。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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