北朝鮮の「密輸船」を転がす闇のネットワーク 取扱品はミグ戦闘機からロケット弾まで
だが、この貨物船が、そこまで悲惨な状況に追い込まれたことはない。以前は北朝鮮周辺の港なら、どこでも自由に寄港することができた。目的は明らかになっていないが、アジア海域を離れて、中東に向かうことさえあった。旧エバーブライト88が北朝鮮の密輸ビジネスにかかわっていることは、秘密でも何でもない。この船の名前は、北朝鮮の武器密輸業者などと必ずセットになって出てくるからだ。
国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会専門家パネルは2016年の報告書で、エバーブライト88を初めて制裁対象に指定する。当時、この船はシエラレオネ国旗を掲げて密輸を行っていた。
拿捕された船から見つかったのは…
専門家パネルは報告書で、ある加盟国から、エバーブライト88を管理しているのは北朝鮮の海運会社「オーシャン・マリタイム・マネジメント(OMM)」だとの情報提供があったと記している。OMMは北朝鮮の陸海運省が操っている企業で、国連の制裁対象だ。
2013年には、OMMが運航する貨物船が武器を密輸しようとしていたことがパナマ運河でばれ、現行犯で拿捕される事件も起きている。船からは解体したソ連製のミグ戦闘機やレーダーシステムなど、大量の兵器が見つかった。
その後、米財務省外国資産管理局(OFAC)はエバーブライト88を制裁対象に加えるが、このときOFACは、北朝鮮と共謀して武器密輸にかかわっている9隻の船舶の中にこの船が含まれていると述べていた。
制裁指定と同時に公表された2016年3月の報道用声明文には、こう記されている。「以下の9船舶が、すでに制裁対象となっているOMMの関連資産であることをOFACは突き止めた」。
OMMと関係していれば、それだけで国連制裁の対象になる。エバーブライト88は、同じく2016年3月に採択された国連安保理決議第2270号で、合計31船舶からなるブラックリストに名を連ねることになった。
決議第2270号には次のように書かれている。「この決議の付属書Ⅲに規定された船舶がOMMによって管理され又は運航される経済資源であり、それゆえに、決議第1718号(2006年)8(d)の規定により課された資産凍結の対象となっている」(付属書Ⅲには、制裁対象になった船舶の名前が列挙されている)。