トヨタとセブン「FCトラック」で手を組む理由 「究極のエコカー」は大型車から普及する

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課題は価格が高いこと。SORAの販売価格は公表されていないが、1台1億円と言われている。一般のディーゼル路線バスは1台2000万円程度なので、5倍もの価格だ。

FCバスは国土交通省の「地域交通グリーン化事業」の対象案件で、車両価格の2分の1が国から補助される。民間バス会社が導入する場合には、これに加えて東京都が2000万円を超える部分を補助するので、ディーゼルバスと同じ2000万円で購入することができる。

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ただ、本格的に普及を図るのなら、いつまでも補助金頼みというわけにはいかない。できるだけ早期に、車両価格を少なくとも今の4分の1程度に引き下げる必要があるだろう。

FCV「MIRAI」、FCバス「SORA」で世界をリードするトヨタだが、燃料電池トラック(FCトラック)は、まだ国内では製造していない(注)。

先月、トヨタとセブン-イレブンは共同で、セブン-イレブンの店舗に商品を運ぶトラックとして、トヨタが開発したFC小型トラックを2019年春に2台導入し、実証実験を開始すると発表した。FC小型トラックは3トン積みの冷凍車で、MIRAIと同じ燃料電池システムと、水素を7kg積めるタンク(MIRAIは4.3kg)を搭載する。最高時速は80km程度で、1回の水素フル充填で約200km走行できる。200kmというのは、セブン-イレブンの配送車が1日に走行する標準的な距離だ。

セブン-イレブンは、2030年までにCO2排出量を2013年比約27%削減する目標を掲げている。物流面に関しては、現在運用中のトラック6000台のうち、ハイブリッド車(HV)、天然ガス車(CG)、電気車(EV)等の環境配慮型は924台(構成比は15.5%)だが、このFC小型トラックを含め、2020年にはその比率を20%に引き上げる方針だという。

単純に計算すれば270台の増加となる。すべてFCトラックというわけではないが、かなりまとまった台数を導入するとみられる。

(注)海外では、トヨタは昨年夏から、米国カリフォルニア州で大型トラックの実証実験を行っている。

食品配送車が先導するFCトラックの普及

食品の輸送は温度管理が重要だ。冷凍機や保冷機器は多量の電気を必要とするが、これはまさにFCVの得意とするところだ。FCVは搭載した燃料電池で発電するので、走行中でも停車中でも、常時冷凍機に電気を送ることが可能だ。EVと違って、電欠の心配もない。

コンビニ業界以外にも、スーパーをはじめ、食品を取り扱い、チェーン展開している業態は少なくない。宅配業者も、クール便の取り扱いは増えている。食品は消費者に直結する商品であり、「環境に優しい」をうたうことは消費者への訴求力が強い。それだけに、1社がFCトラック導入に踏み切れば、競合他社も対抗上後追いする可能性が高い。

「燃料電池トラック/排出するのは水だけ、CO2もNOx、SOxも一切出しません」とボディに大きく表示した配送車が街中を走り回る姿を、日常的に見る日が来るのもそう遠くないことかもしれない。

西脇 文男 武蔵野大学客員教授

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にしわき ふみお / Fumio Nishiwaki

環境エコノミスト。東京大学経済学部卒業。日本興業銀行取締役、興銀リース副社長、DOWAホールディングス常勤監査役を歴任。2013年9月より武蔵野大学客員教授。著書に『再生可能エネルギーがわかる』『レアメタル・レアアースがわかる』(ともに日経文庫)などがあるほか、訳書に『Fedウォッチング――米国金融政策の読み方』(デビッド・M・ジョーンズ著、日本経済新聞社)がある。

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