過労死・自殺が相次ぐ勤務医、ずさんな労務管理が横行、2割が過労死ライン

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宿直8回、休日出勤6回 医師に人権はないのか

日本外科学会が会員を対象として06年11月に実施した調査(回答依頼数3680件、回収数1355件)によれば、「当直明けの手術参加」について「ある」は72%に達している。大学病院に勤務する外科医は「もうろうとした意識の中で手術を行うこともある」と本誌記者に実態を語っている。

前出の日本病院会調査でも、「医療過誤の原因と医師の勤務状況との関連」について、「過剰な業務のために慢性的に疲労している」が71%にも上っている(下グラフ)。

こうした実態を踏まえたうえで、中原医師の勤務実態を見ていきたい。高裁に中原医師の労働に関する意見書を提出した松崎道男・松崎クリニック院長(前・虎ノ門病院医療安全対策室長)は、「うつ病を発症させたと思われる3月の過重労働の実態について、宿直8回、休日出勤6回、24時間以上の連続勤務が7回、休日は月に2日しかなかったことが提出されている。この勤務実態は明らかに労働基準法を逸脱しており、少なくとも3月は過重労働があったという事実がある」と指摘する。

そして松崎院長は意見書をこう結んでいる。「この過重労働を許した人事の管理責任者である病院長、事務長に落ち度がなかったというのであれば、労基法は医師には適用されず、医師には安全に働く人権はないということ、そして労基法を病院は順守しなくてもよいということを判決で示すことになる」。

高裁判決は、業務とうつの関係を認めた。しかし、病院にいっさいの法的責任を問わなかった。松崎院長が言うとおり、裁判所は医師に人権を認めなかったのかもしれない。

ただ働きや過労死ラインの超過勤務が蔓延する医療界が長続きするはずはない。


(週刊東洋経済)
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